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新入社員の育て方(前編)

現在の企業にとって本質的でかつ深刻な問題は限りなく同様・同質化した中で過当競争が進んでいることである。

要するに、会社側が何と言おうと、消費者から見れば「似たり寄ったりの製品・サービスが多く、どこで買っても同じようなものだ」と言うことになってしまっている。その結果、差別化は価格的対応にならざるを得なくなり、不毛な値引き合戦が始まり、売上減少に利益率の低下を加えての二重苦を引き起こしており、儲かるはずの企業がまるで儲からなくなっているのだ。

この二重苦から脱却し、儲かる店になるには「人」がキーになる。例えば、同じFC本部に加盟しているコンビニが同じ品揃えに同一のシステムで価格的にも全く差がなく、同じ様な立地条件に出店しても半年くらいたつと確実に差が出てくる。この原因の大半は人的な接客対応の差にあるのは誰でも気づく。要するに顧客との接点にある販売員個人と顧客個人との良好な関係はそれ自体が独自であり、競合他店に対して強い差別化力を発揮することになるからである。そのため、同じような店が時間の経過に比例するように優劣の差が大きくなってくるということになるのである。

消費者が「あの店は嫌い」といった場合、店そのもの造りや大きさ、品揃えといった物的なことでは無く、人に関する場合が殆どであると言って良く、その逆も多いにあり得ることだ。良く聞く話しで「店長が変わったら」とたんに売上が上がったなどと言うのもそうした事を裏づけている。そして、そうした店の店長は例外なく自分自身が高い接客対応力を持つと同時に指導・教育力が高い。

情報化が進めば進むほど、売れ筋商品に関する情報を中心にしたMD情報は広範かつ高速化し、売れ筋商品独占による商品的差別化は難しくなる。こうした現況で他店に優越した差別力を得るには現場店長による現場社員の教育の高度化と徹底が不可欠のことになる。

 

現場リーダーの「新入社員・若手スタッフスタッフの実力アップ」教育のポイント

顧客接点を磨け

新入社員、若手スタッフスタッフ教育の際にはっきりしておきたいのは、相手先は彼らを含む第一線業務者と向き合わざるを得ないということだ。要するに大半の相手先はその店の社長や店長から接客を受けることは無く、新入社員、若手スタッフスタッフ、場合によってはパート、アルバイトといった経験も知識も浅い者の接客応対を受けることになる。簡単に言ってしまえば、社長や店長が最低だと思っている販売員の顔が相手先にとっての店の顔になっている場合もある。最低の販売員の顔が社長・店長の自らの顔だという自覚を持たない限り、店の高度化も高収益化もあり得ない。要するに社長・店長がどんなに勉強しても、販売員レベルで駄目なら、それは間違い無く駄目な店の烙印を押されることになると言うことである。相手先の立場にたった現場主義で顧客接点を磨くことそれが企業の社員教育の本質である。

厳しい経営環境下にあって新入社員も即実戦に投入せざるを得ない。そうした、新入社員、若手スタッフスタッフを即戦力し、常に高度化していく教育システムを持つ以外に企業として勝ち残れる公算は極めて小さい。

 

就業規則化とマニュアル化

「若手スタッフスタッフが向上しない、新入社員が続かない」といった悩みを持つ社長・店長は少なくない。しかし、こうした場合、初期教育の段階での間違いが尾を引いているケースが圧倒的だ。

最初の段階で自発性やヤル気だけを感情的に促すような心構え的な事に偏した社員教育は基本的には効果を上げられない。例えば、新入社員教育の初頭の段階で店長等から「今日から、皆さんも販売のプロとしての自覚をもって創意工夫し、一生懸命に頑張って下さい」と大声で叱咤激励したところで、「どうして良いから分らない」と言うのが受けての印象となり、上司の話しは聞くだけ無駄と思ってしまうのである。こうなると、上司の話しに対して聞いているように見えながら、その実、理解も納得もしていないといった状況が続くようになってしまう。要するに社員教育の成功のポイントは建前ではなくこれから仕事に絶対的に不可欠で役立つことを具体的に話すことからスタートすべきなのである。でなければ、新入社員・若手スタッフスタッフに対する教育効果は半減してしまう。しかし、現実はこうした建前論的な旧型トップに受けの良い初期教育手法がまかり通っており新入社員・若手スタッフスタッフ教育の実効を削いでいる。

初期段階の教育で最も大切なことは仕事上の規則を充分に理解、納得させ、徹底的に履行させることである。そのためには就業規則と業務マニュアルが不可欠になる。経営者夫婦とパート1人といった規模だから、そんなものは必要ないなどと思ったら大間違いだ。もちろん、就業規則にもマニュアルにも思い至らない程度だから、大きくなれないのだ。適切な就業規則と業務マニュアルを持つことで仕事の透明感が強くなり仕事ははるかに効率良くなる。
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