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営業で成果を出すための「質問力」― SPIN話法をこの記事で基礎覚えて即実践。


営業やビジネスの現場で成果を出すには「質問力」が不可欠です。

本記事では、ビジネスシーンにおいて特に実践的な質問フレームワーク「SPIN話法」について解説します。

状況→問題→示唆→解決という4つのステップで、お客様の潜在ニーズを引き出し、自然な形でクロージングへつなげる技術を、具体例とともにお伝えします。

新人からベテランまで、すぐに使える実践的なノウハウです。


ビジネスの本質は「問題解決」である

私がこの40年近い社会人生活で確信していること。それは、どんな仕事も本質的には「問題解決」であるということです。

営業職の方なら、お客様の困りごとに対してソリューションを提供することが仕事だと理解されているでしょう。でも実は、これは営業だけに限らないんです。

  • スーパーで商品を販売している方も、お客様が「今日の夕食に何を作ろうか」という悩みを解決している。
  • OA機器メーカーの方も、企業の業務効率化という課題を解決している。

すべての仕事は、誰かの問題を解決することでその対価を得ているわけです。

ビジネスの本質は、お客様に価値を提供して、その対価を得ること。そしてその価値とは、お客様の困りごとを解決することに他なりません。

この前提を理解した上で、今回お話しする「質問力」がなぜ重要なのかを考えてみてください。問題を解決するためには、まず相手がどんな問題を抱えているのかを正確に理解しなければならない。そのための手段が「質問」なんです。


仕事で必要な3つの力

問題解決を実現するために、ビジネスパーソンに必要な力が3つあります。

1. 傾聴力(けいちょうりょく)
相手の話をちゃんと聞く力です。耳を傾ける。一方的に話すのではなく、相手の言葉に真摯に耳を傾けることですね。アクティブリスニングという言葉もありますが、要は「聞く」ではなく「聴く」ということです。

2. 質問力
今回のテーマです。こちらからバンバン質問するのではなく、相手の課題に対してちゃんと話を聞いて、適切に尋ねていく力。「聞く」から「訊く」へ、という感じでしょうか。

3. 問題発見力
論理的思考ですね。相手の話から本質的な問題を見抜き、解決策を導き出す力です。

この3つの力がビジネスマンには必要なんですが、今回は特に「質問力」にフォーカスしてお話しします。


優れた質問とは何か

ここで、文芸評論家の小林秀雄さんの言葉を紹介させてください。私の世代だと、大学受験の現代国語で必ず出てくる方でしたね。この小林秀雄さんが、ある対談でこんなことを言っています。

「優れた質問とは、すでに答えの半ばに達している」

ちょっと哲学的。質問したのに、答えの半分は分かっているって、どういうことなのか。。。

これをもう少し分かりやすく言うと、問いの本質を見抜いて、その質問の中にすでに答えの核があるということなんです。皆さんも聞かれたことないでしょうか。池上彰氏の「いい質問ですね」って言われる瞬間。あれって、質問される側も答えやすくて、「そう、そういうことなんだよ」って自然に答えられるような質問。

つまり、質問というのは単に「分からないから聞く」のではなく、ある程度の想定や仮説を持ちながら、相手が答えやすいように投げかけるものなんです。そして、相手からこういう答えが返ってくるのではないか、ということも推論しながら進めていく。

これは遊びじゃなくて仕事ですから。ビジネスにおける質問は、問題解決のための質問なんです。そこを念頭に入れて質問をしていくのが一番大事かもしれません。


SPIN話法とは──4つのステップで顧客の心を掴む

さて、ここからが本題です。SPIN話法というフレームワークをご存知でしょうか。

フレームワークと言うのは日本語で言う「型」とか「土台」っていう意味で、ビジネスシーンでの「フレームワーク」は特定の目的や課題に取り組むための体系的な「型」「土台」を言います。

最近ではYouTubeの営業・ビジネス系のチャンネルでも取り上げられているので「なんとなく聞いたことある」という方もいらっしゃると思います。

筆者は営業を長くしてきたのですが「新入社員の時にこういうことを教わっておけばよかったなぁ」と思うことは山ほどあります。このSPIN話法もその一つです。40年前にこういう研修があったかなと考えてみると、全くゼロではなかったと思うんですが、切り口が全然違ったと思います。

SPIN話法は、お客様の潜在的なニーズを掘り起こすための質問フレームワークです。4つの段階があります。

  • S(Situation):状況質問
  • P(Problem):問題質問
  • I(Implication):示唆質問
  • N(Need-payoff):解決質問

この4つのステップを踏むことで、お客様自身が「これは必要だ」「今すぐ対処しなければ」と自然に気づいていくわけです。

フレームワークって聞くと、「こういう横文字はとっつき辛い」と敬遠している人もいると思います。

私も研修をする中で、フレームワークの落とし込み方がよく分からないという声をよく聞きます。いろいろ考えちゃって、慣れてないから自分の気持ちが入らない、と。

でも、フレームワークというのは、先人たちがゼロから考えて苦労したことを、この型にはめれば割とスーッと答えが出るよというもの。だから、素直に、何の迷いもなくはめ込んでいただきたい。

もちろん最初は慣れないかもしれませんが、何回もやっていくことでしっくりしてくるものです。


S(Situation):状況質問で信頼関係を築く

最初のステップは「状況質問」です。英語では「Situation」、つまりお客様の現状を理解するための質問ですね。

状況質問の目的

  1. お客様の立場や現状を客観的に理解する
  2. 自社商品に関連した情報を収集する(競合他社を使っているか、代替品を使っているか、など)
  3. 「この人に相談したい」というレベルまで信頼関係を深める

ここで重要なのは、いきなり土足で入り込まないこと。新規開拓している取引先や、あまりコミュニケーションができていない相手に対しては、まず「お話を聞いてもいいですよ」という土俵を作らなければなりません。そのための基盤づくりが状況質問なんです。

具体的な質問例

  • 「現状、この業務はどのようにやっていますか?」
  • 「この業務にどのくらいの時間を費やしていますか?」
  • 「担当者は何名いますか?」
  • 「社長、今期の目標はこのくらいと聞きましたが、現状はどうですか?」

組み立てのポイント

状況質問を組み立てる際は、トークスクリプト(台本)を作ることが重要です。営業であれば、こういうふうに言うっていう台本ですね。

  • 5W1H(何を、なぜ、どのように)を意識して聞く
  • できるだけ客観的事実を聞く(「それは社長の感想でしょ?」にならないように)
  • 自社の商品に関する情報に焦点を当てる

ここで少し脱線しますが、営業の仕事って何ですか?と聞くと、ベテランの方でも「売上を上げることでしょ」「販売数を上げることでしょ」と答える方が多いんです。いや、それもあるんですけど、それだけじゃないん。

売上を上げることだけが目的になると、あまり買いたくない人に押し売りしちゃって、マーケットを歪めちゃうんです。だから、売れない理由を聞くこともとても大切。

めちゃくちゃ大切

例えば、自分のところの商品を使ってくれるだろうという前提で話しているわけですよね。でも、競合商品を持っているかもしれない。「なぜうちの商品を買ってもらってないんですか?」ということを聞くのは、営業としてとても重要なことなんです。これ、結構ドキッとする瞬間なんですけどね。

聞き難いことかもしれませんが、ぜひ聞いてみましょう。


P(Problem):問題質問で課題を顕在化させる

次のステップは「問題質問」です。状況質問で得た情報をもとに、お客様の困りごとや課題の原因を深掘りしていきます。

問題質問の目的

  1. お客様が意識していない潜在的な問題を顕在化させる
  2. 感想ではなく客観的な事実に基づいた課題を引き出す
  3. お客様自身に「自分ごと」として認識してもらう

現状と理想にはギャップがありますよね。As-Is(現状)とTo-Be(理想)の間には必ずズレが生じる。そのギャップこそが問題なんです。例えば、売上目標に対して10%ビハインドしている、というような状況。

具体的な質問例

  • 「この業務で、どんな問題がありますか?」
  • 「必要な時間や人員をどのくらい割いていますか?」
  • 「その課題は、何が原因だと思われますか?」
  • 「従業員さんが少ない中で、残業が抑制されている状況だと、どういう影響が出ていますか?」

展開のポイント

  • 状況質問から得た数字に基づいて仮説を立てる
  • 「〜があるのでは?」という問いかけで気づきを促す
  • 限定質問から拡大質問へ(イエス/ノーから「どんな」「どのように」へ)
  • 絞り込みはするが、踏み込みすぎない

ここで注意したいのは、「それはなぜですか?」という質問の仕方。

例えば社長が「売上が前年比10%遅れている」と言ったときに、「それはなぜですか?」と聞くのは、ちょっと相手を詰めることになっちゃうんですよね。

だから、「なぜ10%も遅れているんですか?」ではなく、「10%遅れているということは、どういった要因が考えられますか?」というような聞き方をする。

これは人間性が問われるところでもあります。相手に敬意を払いながら、どう接するかということですね。

実際、状況質問と問題質問までは、経験のある営業マンならできる人が多いんです。でも、ここから先の示唆質問と解決質問まで持っていける人は少ない。そこが差別化のポイントになります。


I(Implication):示唆質問で危機感を共有する

3つ目のステップは「示唆質問」です。英語では「Implication」。問題が解決されない場合、どんな影響が起こるかを考えてもらう質問ですね。

これ、保険営業の方がよく使うんです。ちょっと脅しているわけじゃないんですけどね(笑)

示唆質問の目的

  1. 問題の深刻さを認識してもらう
  2. 緊急性を理解してもらう
  3. 現状のリスクを放置することの危険性に気づいてもらう

保険の営業の人って、こういうふうに言うじゃないですか。「もし旦那さんに何かあった時、お子様の進学費用はどうなりますか?」と。そうすると、お客さんは急に自分ごととして考え始めるんですよね。「確かに、就業保障がない会社だったら困るよなぁ」と。

TikTokか何かで見たんですけど、保険の営業マンがよく使う接続詞として「もしも」「例えばですよ」というのがあるそうです。確かにそういうことなんですよね。

具体的な質問例

  • 「この問題が解決されないと、今後どうなりますか?」
  • 「このままの状態が続くと、どういう可能性がありますか?」
  • 「他にどういう影響がありますか?」
  • 「社長、あと半年で決算ですよね。少なくともあと1ヶ月後には何とかしないといけないんですよね?」

展開のポイント

  • 「失礼でなければ伺ってもよろしいですか」などのクッション言葉を使う
  • 「もし〜だったら」「仮に〜だとしたら」という仮定形で質問する
  • 直接的影響と間接的影響の両方を考えてもらう

ここで重要なのは、お客様に「これはやらなきゃいけない」「すぐやらなきゃいけない」という気持ちになってもらうこと。半年後じゃなくて、1ヶ月後でもなくて、今やらなきゃいけないという緊急性を持ってもらうんです。

研究によると、売れる営業マンは通常の営業マンの4倍の示唆質問を行っているそうです。お客様に危機感を煽る──言葉は正しくないかもしれませんが──ここでお客様に「対処しなきゃ」という気持ちになってもらうことが重要なんです。

問題の大きさ、時間、責任、信頼。これらが失われるかもしれない、という認識を持ってもらう。そこまで持っていくのが示唆質問の役割です。


N(Need-payoff):解決質問でイメージを描いてもらう

最後のステップは「解決質問」です。英語では「Need-payoff」。課題が解決された後、どういう状況が理想なのかをイメージしてもらう質問です。

解決質問の目的

  1. 解決の理想的な状況をイメージしてもらう
  2. 自社の提案が最適な解決であることを自然に理解してもらう
  3. 購入の理由付けを顧客自身に語ってもらう

ここで重要なのは、「これ買った方がいいですよ」ではなく、「これ買うわ」とお客様に言ってもらうことなんです。それが押し売りじゃないってことですよね。

具体的な質問例

  • 「もしこの課題が解決されたら、どんな良いことがありますか?」
  • 「これが改善されると、どのくらいのコスト削減が見込めますか?」
  • 「私たちの商品で解決できれば、それは価値あることだと思いますか?」
  • 「この解決は、あなたの抱える課題に対応できると思いますか?」

展開のポイント

ここで、元光通信の山本社長が言っていたことを紹介します。お客様が金額で迷っているとき、例えば30万円の商品でどうしようかなぁと悩んでいる。そのとき、山本社長はこう切り出すそうです。

「これ、タダだったら使いますか?」

そうすると、お客様は「それはタダだったら使うよ」と答える。その瞬間、「よーし、なんだって」となるわけです。つまり、商品自体はいいと思っているわけで、ネックは値段なんだと分かる。

タダだったらどうですか、使うって言った時点で、お客様の頭の中では金額の問題を度外視して、その商品を使っているイメージができているんです。ただでもいらないものはいらないと思います。でも、タダなら使うということは、その商品には価値があると認識している証拠なんです。

そこで「じゃあ分割にしますか」「長期契約にして月々の支払いを抑えますか」という提案につながる。

  • 顧客自身にその価値を語ってもらう
  • 具体的な数字で効果を想定してもらう
  • 「なんとなく」ではなく定量的に考えてもらう

若い頃、私も営業報告で「とてもいい感じでした」なんて書いて、上司に怒られたことがあります。

「とてもいいって、どういうことだ?」と。それは報告じゃないですよね。

「いい感じがする」じゃなくて、「いいというのは、具体的に何がどういいのか」「いいというのは、買いたいということなのか、ただ一般的に見ていいと思っているだけなのか」「実際に導入する意思があるのか」。そこまで聞かないと、クロージングにはつながらない。

だから、解決質問でも定量的に「どのくらい伸びますか」「どのくらいの期間で伸びますか」と聞く。そうすると、聞かれた方も頭の中でシミュレーションするわけです。他の商品と比較して、「そうだなぁ、これで10%くらいは上がるかなぁ」と。

そこまでイメージしてもらって、初めて「では、詳細なお話をさせていただきたいのですが」という提案につながっていくんです。


トークスクリプトとロープレの重要性

さて、ここまでSPIN話法の4つのステップを説明してきました。でも、理解しただけでは使えないんですよね。

私が研修で強調しているのは、トークスクリプト(台本)を全部作るということです。状況質問、問題質問、示唆質問、解決質問のすべてについて、具体的に何と言うのか、書き出してみる。

そして、それを使って**ロープレイ(ロールプレイング)**をする。お客さん役と営業マン役を交代でやってみる。自分がお客さん役の時は、ちょっとトリッキーな質問をしてあげると、一緒にロープレしている人も飽きないですよ。

この前、ある企業の営業研修に行った時に、「あんまりロープレやらない」と言われて、私にはとても意外でした。なんか恥ずかしいのかな、と思ったんですけど、実際に前に出てやってもらったら、ちゃんとできたんですよね。

やらないよりやった方がいい。そこで失敗してもいいんです。社長役の仲間からトリッキーな質問が出て、「あわわわ」となって答えられなくて恥ずかしい思いをしても、これは練習なんだから。本番のお客様のところで「あわわわ」だったら、もう一回出直してこいになっちゃいますけど、練習なら全然OKです。

この練習が、最終的には自分の成果につながる。経験豊富なおじさまたちと同等に戦うための、短期的に引き出しを増やすための方法なんです。

若い営業マンの方は、ベテランに比べて経験値が少ない。でも、量稽古をする、量をこなすことで、経験値をカバーできます。トークスクリプトをバンバン作って、バンバン練習する。それが自分の武器になるんです。

泳げるようになるためにプールのそばで物理学の本を読み漁るよりも、足がつく程度の深さで実際に泳ぐ練習をした方がいいです。

自転車乗れるようになるために「ジャイロ法則が…」とか言っていたらいつまで経っても自転車には乗れるようにはなれないと思います。

今日から実践してみましょう。


まとめと次のステップ

SPIN話法は、単なるテクニックではありません。お客様の潜在的なニーズを引き出し、自然な形で解決策を提示するための体系的なコミュニケーションフレームワークです。

状況を理解し、問題を顕在化させ、放置することのリスクを共有し、解決した未来をイメージしてもらう。この4つのステップを踏むことで、お客様自身が「これは必要だ」と気づいてくださる。それが、押し売りではない、本当の意味での価値提供なんですね。

私が40年近い社会人生活で学んだことは、仕事の本質は問題解決であるということ。そして、問題解決のためには、相手の課題を正確に理解する「質問力」が不可欠だということです。

フレームワークというのは、先人たちが苦労して編み出した「型」です。素直にその型にはめて、何度も練習してみてください。最初は慣れないかもしれませんが、回数を重ねることで必ずしっくりしてきます。

今日からできる3つのアクション

  1. 自分の商品・サービスについて、SPIN話法の4つの質問を書き出してみる
    状況質問5個、問題質問5個、示唆質問5個、解決質問5個を作ってみましょう。
  2. 同僚とロープレイをする
    作った質問を使って、お客さん役と営業マン役を交代で演じてみてください。トリッキーな質問をしてもらうのもいいですね。
  3. 次回の商談で、最低でも1つのSPINステップを試してみる
    いきなり全部やろうとせず、まずは状況質問だけでも意識的に使ってみてください。慣れてきたら徐々に他のステップも取り入れていきましょう。

質問力を磨くことは、営業スキルを磨くことであり、ひいてはビジネスパーソンとしての総合力を高めることにつながります。ぜひ、今日からSPIN話法を実践してみてください。

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