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営業現場でAIが不可欠になった理由と、生産性を劇的に変える活用法

営業現場でAI活用が避けられない時代になっています。その背景には、事務作業の増大、顧客の情報武装、提案資料作成の時間不足といった課題があります。

しかしAIをただ使えば良いわけではありません。「どこを人間が担い、どこをAIに任せるか」の判断を誤ると、逆に成約率を下げてしまうリスクもあるのです。

本記事では、営業研修の現場から見えてきた、AI活用の本質と実践的な活用法をお伝えします。

170名の営業パーソンが抱えていた共通の悩み

2024年8月、営業マーケットDXPOという展示会で、営業とAI活用をテーマにした講演をする機会がありました。当日は170名もの方にご参加いただいたのですが、正直なところ、これほど多くの方が集まるとは思っていませんでした。

参加された方々にお話を伺うと、実に7割の方が「AIを使いこなせていない」という悩みを抱えていました。無料のChatGPTは触ったことがある。でも、それを自分たちの営業活動にどう活かせばいいのか分からない。本当に成約率向上につながるのか疑問だ、と。

そう。みんな知りたいのは、AIの使い方そのものではなく、「営業の現場で、具体的にどう使えば成果が出るのか」だったわけです。

この質問の背景には、もっと深い課題が隠れています。それは、営業を取り巻く環境が、ここ数年で劇的に変化しているということです。


なぜ今、営業現場でAI活用が不可欠なのか

営業パーソンの時間の使い方を見ると、明らかな変化が起きています。顧客からのさまざまな要望に応えて資料を作成する時間が増えすぎています。提案書、見積書、比較表、導入事例集…。求められる資料の種類も量も、以前とは比較にならないほど膨れ上がっています。

その結果、何が起こっているか。

実際に営業活動をする時間、つまり顧客と向き合う時間が圧倒的に不足している。

さらに厄介なのが、顧客側の情報武装です。インターネットの普及で、顧客は営業パーソンが訪問する前に、すでに相当な量の情報を集めています。場合によっては、営業側よりも詳しい知識を持っていることすらあります。

こちらが「弊社の製品はですね…」と説明を始めても、「それ、もう御社のWebサイトで見ました」「競合のA社とB社も調べましたが、御社の強みは何ですか?」と、いきなり本質的な質問をされる。こういう場面が増えてきているわけです。

つまり、営業パーソンには二つの課題が同時に降りかかっている状態です。

一つは、膨大な事務作業をいかに効率化するか。

もう一つは、顧客の知識に対抗できるだけの情報収集力をいかに強化するか、です。

この両方を人力だけで解決しようとすると、営業パーソンは完全にパンクしてしまいます。だからこそ、AI活用が「あったら便利」ではなく、「なければ戦えない」レベルの必須ツールになってきています。


AIに任せる仕事、人間がやるべき仕事の境界線

ただし、ここで大きな落とし穴があります。AI活用を適切に判断しないと、逆に生産性を下げたり、成約率を低下させてしまうリスクがあります。

営業がやらなきゃいけない仕事もあれば、AIに任せなきゃいけない仕事もある。この切り分けを間違えてしまうと、せっかくAIを導入しても効果が出ないどころか、マイナスになってしまう。

実際にあった話をお伝えしますね。


「キラキラ資料」が成約率を下げた若手営業マンの失敗談

以前、うちの会社に営業に来た若手の営業マンがいました。初回の訪問時、彼が持ってきた提案資料は、それはもう驚くほどかっこよかった。デザインも洗練されていて、グラフや図表も美しく配置されている。一目で「これ、AIで作ったな」と分かるクオリティでした。

でも、内容を見ていくと違和感がどんどん大きくなっていっていきました。横文字がバリバリ並んでいて、「DX推進」「イノベーション創出」「シナジー効果」といった、いかにもAIが好みそうな言葉が満載。確かにかっこいい。でも、うちの会社に合っているかというと、まったく合っていない。

うちは中小企業で、100名程度の規模の会社です。キラキラした横文字よりも、もっと地に足のついた、具体的で分かりやすい提案が欲しいわけです。その資料を見た瞬間、「ああ、この人はうちのことを考えて作っていないな」と感じてしまいました。

そこで聞いてみました。「これ、うちのこと考えて作りました?」と。すると彼は正直に答えてくれました。

「すいません、AIに任せました。実は御社のことをあまり考えずに、効率化を目的に資料を作らせていました。確かに言われてみたら、御社には合わない言葉や文言がいろいろ見え隠れしてました。チェックしなかったことが敗因です」と。

彼は「敗因」という言葉を使いました。つまり、もう私が買わないと予測していたわけです。実際、その通りでした。

ただ、彼には好感が持てました。正直に認めて、リベンジしたいと言ってくれたからです。後日、彼は改めて資料を作り直して訪問してくれました。今度の資料は、確かに少し「どんくさい」デザインでしたが、うちの会社の規模感や課題にピッタリ合った内容になっていました。

この経験から学べることは何か。AIは確かに優れた資料を作れます。でも、AIは直接取引先を見ていない。その会社の社長の表情も、オフィスの雰囲気も、社員の年齢層も知らない。だからこそ、AIが出してきた資料を、人間がチェックしてアレンジする必要があるわけです。


営業は「感情労働」である——AIにできないこと

ここで、営業という仕事の本質について考えてみたいと思います。営業は「感情労働」です。

労働には大きく三つの種類があると言われています。一つ目が知識労働、二つ目が感情労働、三つ目が肉体労働です。多くの人は、営業を知識労働だと勘違いしている。知識を与えれば、お客様は勝手に買ってくれる、と言った感じでしょうか。。

でも実際には、営業は感情労働です。どういうことか。

例えば、お客様からこんなことを言われることがあります。「あの営業マン、私の話をちゃんと聞いてくれないから、担当を変えてくれないか」と。これ、知識が足りないから言われるわけではないですよね。感情的に、自分の要望を受け止めてもらえていないと感じたから、不安になってしまったわけです。

もし営業が純粋な知識労働なら、知識さえあれば問題ないはずです。でも、「話を聞いてくれない」という理由で担当を変えてほしいと言われる。これは、営業が感情労働である何よりの証拠です。

お客様の悩みにしっかりフォーカスして、その話をしっかり聞く。うなずきながら共感して、「お悩みよく分かります」と伝える。その上で、適切な提案をする。これが営業の本質。

そして、これはAIには難しい仕事です。

もちろん、AIも「共感的な文章」を生成することはできます。でも、本当の意味での共感、つまり相手の感情を読み取って、時には言われたことをあえて否定して別の提案を持っていく、ということは苦手。

例えば、お客様が「こういう機能が欲しい」と言ったとします。AIに指示すると、その要望通りの提案書を作ってくれるでしょう。でも、本当に優秀な営業パーソンなら、こう言うかもしれません。「分かります。言ってることはよく分かります。でもですね、そのまま言う通りの提案をすると、御社にとってマイナスになる可能性があります。なので、実は違う切り口の提案をさせていただきたいと思います」と。

これ、AIには難しい。AIは基本的に、言われたことに忠実に応答します。

それを否定して、あえて別の提案を持っていくという高度な判断は、人間ならではの仕事です。

だからこそ、AIと人間の役割分担が重要になってくるわけです。


AI活用で営業はどう変わるのか(4つの具体的変化)

では、AIを適切に活用すると、営業活動はどのように変化するのでしょうか。具体的に四つの観点から見ていきましょう。

1. 情報収集力と仮説設定力の飛躍的向上

以前なら、営業訪問前に企業情報を調べるとなると、インターネットで一つひとつ検索して、会社概要を見て、ニュースリリースを読んで…と、かなりの時間がかかりました。

でも今は、AIに「この会社について情報収集してください」と依頼するだけで、世界中の情報を集めて、市場分析や競合分析までしてくれます。それを短時間でまとめてくれる。

これによって何が変わるか。事前にお客様の課題感や悩みを深く理解した上で、仮説を立てて訪問できるようになるわけです。「御社は今、こういう課題を抱えているのではないでしょうか」と、具体的な仮説を持って対話を始められる。これだけで、商談の質が劇的に変わります。

2. プレゼン資料作成の効率化とカスタマイズ力の両立

先ほどの若手営業マンの失敗談でお伝えしたように、AIはかっこいい資料を作れます。でも、そのまま使うのは危険です。

適切な活用方法は、こうです。ベースとなる資料の8割から9割はAIに作らせる。そして残りの5%から10%を、人間がチェックしてアレンジする。言葉を変えてみる、資料の順番を変えてみる、不要な部分を削除する。こういう選択をする。

これによって、資料作成の時間は大幅に短縮されながらも、顧客に合わせたカスタマイズができる。効率とカスタマイズ、この両立が可能になるわけです。

3. 商談分析と次回提案の精度向上

今の時代、一回の商談で契約が決まることは少ないですよね。複数回の商談を経て、ようやく成約に至る。だからこそ、各商談の振り返りと分析が重要になります。

AIを活用すると、実施した商談内容を分析して、次の成約率が何パーセントかを予測してくれます。「今回の商談では、相手の反応がこうだったので、次回はこういうアプローチが有効です」といった提案もしてくれる。

初回の商談がうまくいかなかったときも、それを挽回するための施策をAIと一緒に考えることができます。これは、営業マネージャーのような存在がAIによって実現されているイメージです。

4. オフィスワークの劇的な時間短縮

見積書作成、お礼メールの作成、上司への報告書作成、お客様へのお役立ち情報の送付、スケジュール管理…。営業パーソンの事務作業は本当に多岐にわたります。

これらすべてにAIを活用できる。見積書のフォーマットをAIに覚えさせておけば、条件を入力するだけで見積書が完成します。お礼メールも、商談内容を入力すれば、適切な文面を生成してくれる。

重要なのは、オフィスにいる時間をいかに短縮するかです。AIを活用することで、事務所での作業時間を減らし、お客様と向き合う時間を増やせる。これが営業の本質を取り戻すことにつながります。


まとめと、明日から始められる一歩

営業現場でAI活用が不可欠になった背景には、事務作業の増大と顧客の情報武装という二つの大きな環境変化があります。これらに対応するために、AIの力を借りることは、もはや選択肢ではなく必須になっています。

ただし、AIをただ使えば良いわけではありません。「どこを人間が担い、どこをAIに任せるか」の適切な判断が、成約率を左右します。

AIは情報収集、資料作成のベース、商談分析、オフィスワークの効率化に威力を発揮します。一方で、顧客の感情を読み取り、共感し、時には言われたことを否定して別の提案を持っていく。これは人間ならではの仕事です。

営業は「感情労働」である。この本質を忘れずに、AIを最強の相棒として活用する。この両立ができたとき、あなたの営業活動は劇的に変化するはずです。

明日からできることは何か。まずは、次の商談前の情報収集をAIに任せてみてください。「この会社について、業界動向、競合状況、抱えている課題を分析してください」と指示するだけです。そして、出てきた情報を読み込んで、自分なりの仮説を立てる。

この小さな一歩が、あなたの営業スタイルを変える第一歩になるはずです。

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