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はじめに|「賃上げ」と「人材投資」は、もはやセットで考える時代へ
2026年、中小企業を取り巻く経営環境は大きな転換点を迎えています。物価高、人手不足、最低賃金の連続的な引き上げ。これらが同時に押し寄せるなか、政府は「賃上げを実施した中小企業」を税制と補助金の両面から強力に後押しする姿勢を継続しています。
しかし現場の経営者や人事担当者の方々からは、次のような声が後を絶ちません。
「賃上げはしたいが、原資が確保できない」
「補助金や税制があると聞くが、自社が対象になるのか分からない」
「研修費を増やすと税控除が上乗せされるって本当?」
「結局、何から手をつければいいのか整理できていない」
本記事では、2026年度の賃上げ促進税制および関連補助金の最新概要を整理したうえで、「教育訓練費(社員研修への投資)」を組み合わせることで、税負担を軽減しながら人材を育てる方法を徹底解説します。採用力・定着率・生産性のすべてに効く”一石三鳥”の打ち手として、人事・経営判断の材料にしてください。
なお、本記事で紹介する制度の最新詳細は、中小企業庁公式サイトでも確認できます。
1. 2026年の賃上げ促進税制|中小企業が押さえるべき3つのポイント
1-1. 制度の全体像
賃上げ促進税制は、前年度より一定割合以上の賃上げを実施した企業に対し、増加額の一定割合を法人税額から直接控除できる制度です。所得控除ではなく「税額控除」である点が大きな魅力で、利益が出ている企業ほど恩恵が大きくなります。
2024年度の税制改正により制度が拡充され、2027年3月31日までに開始する事業年度が対象期間となっています(2026年度も継続)。中小企業にとっては、過去最大級に使いやすい設計といえます。
詳細な要件は国税庁「賃上げ促進税制に関するQ&A」でも公開されています。
1-2. 中小企業向けの主な控除率(2026年度)
賃上げ率(前年比)
基本控除率
1.5%以上
給与等増加額の15%
2.5%以上
給与等増加額の30%
これに加えて、以下の上乗せ要件を満たすと控除率がさらにアップします。
- 教育訓練費が前年度比5%以上増加:+10%
- くるみん・えるぼし認定など:+5%
これらを組み合わせると、中小企業の最大控除率は45%に達します。給与等の増加額に対して最大で半分近くが税金から戻ってくる計算です。
※具体的な要件・控除率は毎年度の税制改正で変動する可能性があります。実際の申告にあたっては必ず顧問税理士または所轄税務署にご確認ください。
1-3. 「赤字でも使える」繰越控除の新設
2024年度改正で特筆すべきは、控除しきれなかった分を最大5年間繰り越せる「繰越控除制度」が中小企業向けに新設された点です。これまでは「黒字でなければメリットがない」と敬遠されてきましたが、現在は赤字の年に賃上げ・研修投資をしておけば、将来の黒字化に備えて控除枠を確保できます。
スタートアップや成長フェーズの企業にとって、これは大きな朗報です。
2. 補助金との組み合わせで効果を最大化する4つの制度
賃上げ促進税制は単独でも有効ですが、国・自治体の補助金と組み合わせることでさらに効果が増します。代表的な4制度を整理します。
2-1. 小規模事業者持続化補助金
販路開拓や業務効率化に取り組む小規模事業者向けの補助金です。賃上げ枠・賃金引上げ特例を活用すると、補助上限額が通常枠の50万円から200万円規模まで引き上げられます。研修費用の一部もこの補助金で賄える場合があります。
2-2. ものづくり補助金
設備投資が中心ですが、大幅賃上げを伴う事業計画を提出することで補助上限額が上乗せされる仕組みがあります。生産性向上のための研修もセットで計画すると採択率が高まる傾向にあります。
2-3. 業務改善助成金(厚生労働省)
事業場内最低賃金の引き上げと設備・コンサル投資・研修投資をセットで行う中小企業を対象とした助成金です。研修費用そのものが助成対象になりやすく、賃上げ促進税制との相性は抜群です。
2-4. 人材開発支援助成金
社員研修・OJTにかかる経費と賃金の一部を助成する制度です。教育訓練費を計上しながら賃上げ促進税制の上乗せ要件もクリアできるため、「補助金で研修費を回収し、税額控除でさらに圧縮する」という二重の効果が狙えます。
詳細は厚生労働省「人材開発支援助成金」公式ページでご確認ください。
3. 「教育訓練費」を制する者が、賃上げ税制を制する
ここからが本記事の核心です。
賃上げ促進税制の控除率を15%から最大45%まで押し上げる最大のレバーが、「教育訓練費の前年度比5%以上の増加」という要件です。
3-1. 教育訓練費として計上できる主な費用
- 外部研修・セミナー受講料
- 外部講師を社内に招いた際の謝礼・派遣料
- e-ラーニング・オンライン研修の利用料
- 研修テキスト・教材費
- 研修施設の使用料
セミナー&研修ネットを通じて依頼いただく研修費用も、原則として教育訓練費に該当します(最終的な計上可否は顧問税理士にご確認ください)。
3-2. 「前年度比5%増」のハードルは意外に低い
たとえば前年度の教育訓練費が100万円だった企業の場合、105万円以上にすれば要件を満たします。研修1本を追加するだけでクリアできるケースも多いのです。
「賃上げの原資を捻出するために、まず人材を育てて生産性を上げる」——この順序で考えると、教育訓練費の増額は単なる節税策ではなく、経営戦略そのものになります。
3-3. 計上漏れを防ぐ3つの実務ポイント
実務上、教育訓練費の計上で躓きやすいポイントを3つ挙げておきます。
- 領収書・契約書の保管徹底:研修委託契約書、受講料の領収書、講師派遣の請求書は必ず保管
- 明細書の整備:実施時期・受講者数・研修内容・支払額をまとめた明細書を作成
- 対象外費用の切り分け:社内講師の人件費、自社内の会議室使用料は原則対象外
4. 補助金・税制と相性の良い研修テーマ7選
「では、具体的にどんな研修を選べば良いのか?」という疑問にお答えします。賃上げの根拠としても説明しやすく、生産性向上にも直結する研修テーマを厳選しました。
4-1. 管理職・リーダー向け研修
賃上げによる人件費増を吸収するには、現場マネジメントの質を高めることが不可欠です。管理職1人の能力向上が、部下10人分の生産性に直結します。
- リーダーシップ研修
- 部下育成・コーチング研修
- 目標管理(MBO/OKR)研修
- マネジメント基礎研修
→ 管理職・リーダー研修プログラム一覧
4-2. ハラスメント防止・職場環境改善研修
2022年4月よりパワーハラスメント防止対策が中小企業にも義務化されました。研修未実施のままでは、定着率の低下や行政指導のリスクを抱えることになります。
- パワハラ・セクハラ防止研修
- リスペクトトレーニング
- アンガーマネジメント研修
- メンタルヘルス研修
→ ハラスメント防止研修プログラム一覧
4-3. 新入社員・若手社員向け研修
早期離職の最大の原因は「成長実感の欠如」と「上司との関係性」です。基礎スキルを早期に底上げすることが、結果的に賃上げ余地の創出につながります。
- ビジネスマナー研修
- ロジカルシンキング研修
- 新入社員フォローアップ研修
→ 新入社員・若手研修プログラム一覧
4-4. DX・AI・SNS活用研修
少ない人員で売上を伸ばすには、デジタル活用が避けて通れません。生産性向上の根拠として最も説明しやすい投資領域です。
- 生成AI活用研修(ChatGPT・Copilot等)
- Instagram・TikTok等SNSマーケティング研修
- 業務効率化・自動化研修(RPA・ノーコード)
→ DX・AI活用研修プログラム一覧
4-5. 営業力・接客力強化研修
売上の増加こそが賃上げの最大の原資です。営業現場・接客現場の生産性を上げる研修は、投資回収のスピードが特に速い分野です。
- 営業スキル研修
- 顧客対応・クレーム対応研修
- プレゼンテーション研修
4-6. コンプライアンス・情報セキュリティ研修
近年急増するサイバー攻撃や個人情報漏洩リスクに対応する研修です。法令遵守は企業存続の前提条件であり、教育訓練費としても計上しやすい領域です。
- 情報セキュリティ研修
- 個人情報保護法対応研修
- インサイダー取引防止研修
4-7. 女性活躍・ダイバーシティ推進研修
「えるぼし認定」など賃上げ促進税制の上乗せ要件(+5%)の取得につながる研修です。研修実施と認定取得の両方で控除率が上がる、二重メリット研修です。
- 女性リーダー育成研修
- アンコンシャスバイアス研修
- ダイバーシティマネジメント研修
5. 申請から税額控除までの流れ|5ステップで完結
複雑に見える制度ですが、実務の流れはシンプルです。
Step 1|要件確認
顧問税理士または商工会・商工会議所に相談し、自社が賃上げ要件を満たせるかを確認します。
Step 2|賃上げの実施
2026年度中(2026年4月〜2027年3月開始事業年度)に、就業規則や賃金規程を改定して賃上げを実施します。
Step 3|研修計画の策定
前年度比5%以上の教育訓練費増加を見込んだ年間研修計画を策定。セミナー&研修ネットに相談すれば、自社に合った研修プログラムの組み合わせを提案します。
Step 4|研修の実施
集合研修・オンライン研修・e-ラーニングなど、実施形態は柔軟に組み合わせ可能です。受講記録・領収書・契約書類は必ず保管してください。
Step 5|決算時の税額控除申告
税理士と連携し、法人税申告書の別表を作成。教育訓練費の明細書(実施時期・受講者数・内容・支払額)を添付して申告します。
6. 知らないと損する失敗パターンと成功事例
6-1. よくある失敗パターン3つ
失敗1:書類不備で控除を取り逃がす
教育訓練費の明細書が不完全で、税務調査時に否認されるケースが後を絶ちません。研修ごとに「いつ・誰が・何の研修を・いくらで受けたか」を記録する習慣をつけましょう。
失敗2:賃上げ判定の対象者を間違える
役員や役員の親族は雇用者給与等支給額の計算から除外されます。ここを誤ると判定基準を満たせず、控除自体が受けられなくなります。
失敗3:年度をまたいだ計画ミス
研修を年度末に集中させると、講師スケジュールが押さえられず実施できないリスクがあります。年度初めに年間研修計画を策定するのが鉄則です。
6-2. 成功事例|製造業A社(従業員50名)の場合
A社は2024年度に従業員平均給与を2.8%引き上げ、同時に教育訓練費を前年比12%増(DX研修・管理職研修を追加)に設定しました。結果として控除率40%を獲得し、法人税が約220万円圧縮されました。さらに削減できた税負担を翌年度の賞与原資に充当し、社員の定着率も向上したという好循環を生んでいます。
これは決して特殊なケースではありません。要件を理解し計画的に動けば、多くの中小企業で再現可能な成果です。
7. まとめ|「賃上げ × 研修」は、人材戦略の最強の組み合わせ
2026年の賃上げ促進税制は、中小企業にとってかつてないほど使いやすい制度設計になっています。とりわけ「教育訓練費5%増で控除率+10%」という上乗せ要件は、人材育成と節税を同時に実現できる、まさに一石二鳥の仕組みです。
賃上げを「コスト増」と捉えるか、「人材投資と税優遇を引き出すレバー」と捉えるか。この発想の差が、これからの数年で中小企業の競争力を大きく左右します。
「自社で使える制度はどれか」「どの研修から始めればいいか」が見えないまま時間を浪費するのは、文字通り”知らないと損する”事態です。
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