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第4回「パワハラ防止法対策セミナー」企業としてできることとは?

2021年8月3日、今回で第4回目となる「パワハラ防止法対策セミナー」が実施されました。回を重ねるごとに新しい議論が生まれ、どんどん進化しているこちらのプログラム。今回は、コミュニケーションにまつわる話題が多く取り上げられています。当記事では、セミナー内で開催されたパネルディスカッションの内容をレポートします。

セミナーの概要

テーマ:パワハラ防止法対策セミナー〜パワハラ加害者が生まれる企業の特徴〜
対象:企業の人事・コンプライアンス担当者様など
所要時間:約2時間

片桐由紀子講師による基調講演「本当は怖いハラスメント」では、ハラスメントの基礎知識をレクチャー。続くパネルディスカッションは、参加者からの質問に応える形式で、廣瀬由美講師、片桐由紀子講師、橋野由利子講師の3名による議論が行われました。

過去のセミナーレポートはこちら!
【第1回目】
【第2回目】
【第3回目】

パネルディスカッション

今回のパネルディスカッションは、参加者の質問をもとに議論を展開。三者三様の視点から、ハラスメント問題にメスを入れました。

根幹にあるのはコミュニケーションの問題

廣瀬講師:参加者の皆様から寄せられたご質問をもとに、ハラスメントの実態や、企業が抱える課題についてディスカッションしていきたいと思います。早速、一つ目の質問です。

  • 会社としてできるハラスメントの対応策や、防止策を教えてください。

廣瀬講師:両講師のご意見はいかがでしょうか?普段行っている研修も踏まえてうかがえますか。

橋野講師:職場環境などのハード面は比較的整えやすいと思うのですが、みなさんがつまづくのはやはり人間関係のところです。実際にハラスメントがあるけれど、口をつぐんでいる方もたくさんいるでしょう。
一回研修をしたからといって、それがゴールとは言えません。中長期的な研修の計画を立てて、根気よく続けていく必要があると思います。

片桐講師:私の場合は、表立って「ハラスメント研修」や「コンプライアンス研修」と名のつく研修をすることは少ないんです。ただ、企業で研修の担当をされている方から「社内の文化としてハラスメントやコミュニケーションロスが起こってしまっているので、課題解決につながる要素を入れて欲しい」というご要望をいただくケースがあります。

受講者にとっては、直截的に「ハラスメント」とか「コンプライアンス」というタイトルや見え方にはなっていないけれど、価値観をすり合わせをしたり、違いを認め合えるような風土の醸成につながる内容で行うことも。また「部下やスタッフに気持ちよく働いてもらい、生産性を上げる」という目的で、役職者向けのコーチングやコミュニケーションの研修を行うケースもありますね。

廣瀬講師:お二人の話で共通しているのは、やはり「コミュニケーションの問題を解決する」そして「人は一回では変われないので、継続して何度も気付きの場を用意する」という2点ですね。次のご質問です。

  • 重大な問題を事前に防ぐための具体策があれば知りたいです。

廣瀬講師:こういう時にはこんなふうに関わるとハラスメントを防止できる、のような具体例ってありますか?

片桐講師:人が相手なので、外から見ただけでは何が起こっているのかわからないことってあると思うんですよね。そういう場面に出くわしたとき、割って入るが難しかったとしても、被害者の方に対して「ちゃんと見てるよ」と寄り添ってあげるのが大切ではないでしょうか。
また、行為者側にも「見てますよ」という姿勢を示すことで、防止できるケースはたくさんあると思います。

橋野講師:時期的なフォローを入れていくのも有効だなと思います。年に数回のフィードバック面談の前に研修を実施する、メンタルに変化が出やすい季節の変わり目に社内報にメッセージを載せるなど、ちょっとしたことでもいいんです。
「気を付けましょうね」「イライラしている時はこうしましょうね」と伝えていくのが、ハラスメントを未然に塞ぐ簡単な方法の一つです。

廣瀬講師:時期的なフォローが有効だという意見は、非常に同感です。「最近イライラしているかも」「厳しい言い方をしているかも」と、本人が気付くためのきっかけになりそうですね。

ハラスメントを起こさせない環境づくり

廣瀬講師:続いてはこちらです。

  • 社内に設置するハラスメント相談窓口の担当には、どのような人を選出すればよいでしょうか?

廣瀬講師:実際にハラスメントを受けた方が、いきなりSNSで発信してしまったり、労基に駆け込んだりすることを防ぐためにも、「皆さんの話を聞く風土を作ってますよ」というアプローチも必要だと思います。その中のひとつとして、相談窓口の設置というのは有効ではないでしょうか。
こちらのご質問について、橋野講師はどのようにお考えですか?

橋野講師:例えばセクハラの相談をするとき、女性から男性へは詳細を話しにくいですよね。なので、男女どちらも相談員として配置してください。
そして、相談員の年代を意識することも大切です。経験のある上の年齢の方を配置するパターンが多いのですが、「話しにくい」と感じられる若手社員も少なからずいらっしゃいます。幅広い年代の相談員がいるのが望ましいでしょう。
相談員にも適性があるので、何名が候補者をあげるがベストですね。人の話を聞くことにもスキルが求められるため、しっかり研修を行う必要があります。中小企業の場合は、まずは男女一人ずつなどのできる範囲からでいいので、始めてみるといいですよ。
加えて、社外にも窓口も置きましょう。ハラスメントは社内の問題なので、社員には相談できないと感じている方がほとんどです。社内、社外の両方に窓口を置いている企業でも、ほぼ社外に問い合わせがありますね。

片桐講師:私自身がハラスメントを受けた実体験からお話しするのですが、当時在籍していた大企業では、外部のカウンセリングルームと契約していたんですね。実際にそこで利害関係のない社外の人に話すことで、かなり気持ちが楽になれたんです。外部に捌け口を用意してあげるというは、ひとつのクッションになると思います。

橋野講師:窓口の設置だけでなく、相談方法もいくつか用意しておくといいと思います。例えば、電話、メール、チャット、対面などです。選べる手段が多いほうが、より相談することへのハードルが下がります。

廣瀬講師:会社が「ハラスメントの相談窓口を設けました」と告知するだけでも、被害者の方にとっては「本気で取り組んでいるんだ」という安心感にもつながりそうですね。一方で、少なからず自覚がある行為者に対しての抑制力にも期待できます。
さて、次はこちらのご質問です。

  • 「昔は厳しく育てられたから」と、部下にも厳しすぎる指導をする上司が多いです。このような考え方を変えるのは難しいでしょうか?

片桐講師:人を変えるのはとても難しいと思います。とはいえ、研修や誰かの言葉、本などによって気付きを与えることで変わる場合ももちろんあります。今挙げた中でも、研修は行動変容につながる大きなきっかけになるでしょう。
誰かの行動を変容させる時には「なぜそうしなければならないか」という理由が必要になります。研修では、ケースメソッドに取り組んでみたりとか、ロールプレイを取り入れてみたりすることで、相手の気持ちを感じてもらいます。なかには「自分もハラスメントをしてしまっているかも」と気付けるケースも。
上の世代の方が厳しく育てられたことで成功を積んだ体験や、そこで育まれた価値観は、決して傷つけてはいけないものだと思います。とはいえ、時代が変わり下の世代の感性に寄り添うことが必要だと認識はありながら、どうすればいいのかわからないという方も多いはずです。何度も研修を重ねるなかで、少しずつ行動が変容していくのが望ましいですね。

橋野講師:今の若い世代は非常に合理的です。厳しく教えるのではなく、マニュアルにしてくれればいいと思っている方が多いでしょう。
ところが厳しく育てられた世代が新人だった頃は、今のようにさまざまなツールもなく、口頭で教えられて育っている。そこにギャップがあるんですよね。価値観を変えるのは難しいですが、「こういう教え方で指導してください」という導き方ができるのではないでしょうか。

廣瀬講師:「昔は厳しく育てられた」のように、よかれと思ってやっていることがハラスメントになる方もいれば、怒りをコントロールできないパターン方もいますよね。そういう上司が部下をマネジメントしている場合、どうすれば行動を抑えてもらうことができるでしょうか。

橋野講師:「怒りは6秒でおさまる」と言われていますが、ハラスメントをする人は、6秒ではおさまりません。これは、いくら学んでもなかなか難しいものです。なので、怒りをぶちまけることを許さない環境づくりが大事になってくるんです。行為者だけを教育するのではなく、職場全体でハラスメントを許さない風土を作っていくこと。
パワハラをする上司は降格させるなど、「ハラスメントが発覚すればこう対応する」というペナルティーを明確にルール化することも必要だと思います。

片桐講師:会社で「言える風土」に変えていくためには、会社としてハラスメントを許さないことを宣言するとか、「こういう人材をよしとする」のようなメッセージを発信することも必要なのかなと思いますね。

被害者にも行為者にもならないために

廣瀬講師:続いてのご質問です。

  • 一人ひとりがパワハラの被害者にならない具体的な行動を教えてください。

廣瀬講師:こちらについては、お二人はどのようにお考えでしょうか?

橋野講師:被害者になるタイプは似通っていることが多いんです。行為者から見て、「この人は何を言っても言い返さないだろう」と思われてしまう人がターゲットになります。逆に、言いたいことをはっきりと言えるタイプは被害者になりにくい。
そこで、誰もが発言できる機会を作るのが効果的ではないでしょうか。部署内のミーティングで誰もが一言発信できるような機会を作っていくとか、リーダーがあまり自己主張しないタイプの人に声かけをして、困っていることがあれば吸い上げるなどの取り組みです。コミュニケーションの場を意識的に持つというのが大切だと思います。

片桐講師:昔、いわゆる人間クラッシャータイプの上司がいました。「片桐だったら大丈夫だろう」と言われて、その人の下に配属されたのですが、今でいうマウンティングをがっつりとられて、精神的に参ってしまったことがあるんです。時期的にも忙しく周囲がピリピリしていたため相談もできず、そういう状態に閉じ込められてしまっていました。
ハラスメントの常習者は、特定の人に狙いを定めるものだと思います。ターゲット以外にはいい顔をしていたりする。そうなると「なぜ自分だけなんだろう」とますます萎縮し、ループに入ってしまうんですよね。
私は休職を経て復帰することができましたが、その時に話を聞いてくれたカウンセラーの方から「できないことはできないって言ってもいいんだよ」と許可をもらえたことがとても大きかったですね。ハラスメントを受けた人は、狭い檻に閉じ込められたような感覚になります。そこから解放してあげるためには、外部の力が必要ではないでしょうか。

廣瀬講師:もし今の片桐さんが過去の自分に声をかけるとしたら、何と言ってあげたいですか?

片桐講師:「開き直って大丈夫だよ!」と言ってあげますね。

廣瀬講師:真面目な方が、真正面から受け止めてループに陥ってしまうというのも多そうですね。
実は私も、ハラスメントを受けたことがあります。例えば手を握られた際に、私は「やめてくださいよ!」と明るく拒否ができたのでそれ以上の被害はなかったのですが、そこで言えなかった方は、その後もセクハラを受けているようでした。瞬間的に、さっと拒否できるかどうかというのも大切なのかなと思います。
また、「この人はパワハラをする」と明らかにわかる上司の下につけられたこともあります。ただ、その上司の上の人たちもパワハラ体質だったため、どこにも相談できない状況でした。結果として私は、部署移動の希望を出したのですが、やはりその後に入った人も何度も辞めていったようでした。
ハラスメントの気質を持った社員に部下をつけざるを得ない場合には、やはり必要以上にフォローを入れる必要があるでしょう。たとえ口では「大丈夫です」と言っていても、表情がそうでない場合だってあります。周りからのサポートや手助けが本当に重要です。

片桐講師:「察する」ことが大切だというのはさまざまな研修でお伝えしていますが、やはり周囲に見てもらえているという安心感は、何物にもかえがたいと思います。周囲の目はハラスメントの抑止力としても働きます。
人の悩みのほとんどが人間関係と言われますが、上手くいっていないと思考がそちらに気を取られて、仕事どころではなくなってしまいます。人間関係の課題で人材を無駄にしてしまうのは、企業にとっては損ですよね。研修を、社内の文化をどういうものにしていきたいのかを考える機会にしていただけたらいいですね。

廣瀬講師:さて、次が最後のご質問です。

  • 行為者にならないための効果的な指導の方法を教えてください。

廣瀬講師:例えば弊社で実施している研修では、演習を設けています。いろんな立場の人がチームになって、お互いの価値観をすり合わせながら答えを導き出していくのですが、これも一つの指導法ですよね。
お二人が研修の中で取り入れている方法があれば、ぜひお聞かせください。

橋野講師:ハラスメント研修の前にヒアリングやアンケートを入れて「これってパワハラかな?」と思うものを挙げてもらう、というのをやっています。
そこで出た内容を、研修の中でハラスメントか否かみんなでジャッジするんです。あくまで重い雰囲気にならないように、ゲーム感覚で「これってレッドカードですか?イエローカードですか?」と問いかけるようにしていますね。パワハラ研修を受けた後だと、行為者も自分がやっていたことに気付くことができるんですよね。
この取り組み、意外と笑いで終われるところがいいんですよ。

廣瀬講師:みんなでわいわいと議論して笑いで終われるけれど、行為者に対してははっきり「あなたの行為はレッドカードだよ」と伝えることができますね。重い雰囲気で指摘を受けるより、行為者本人も受け止めやすくなると思います。

橋野講師:研修を受けたとしても、残念ながら行為者になってしまう人はいます。ですが「この間自分が言ったことって、相手を傷つけていたかもしれないな」と気付ける人が一人でも増えるようにと思ってやっています。こういうきっかけがないと、行動変容って難しいですよね。

廣瀬講師:研修を、自分の行動を省みるきっかけにしてもらえるといいですね。

片桐講師:社内だけの取り組みではどうしても忖度があって、変えていくのが難しい側面もあると思います。ところが、担当者の方が言いづらいことを、私たち講師が第三者の声として伝えると、耳を傾けてもらいやすくなるのはありますよね。講師やコンサルタントの声ということで上手く使ってもらえるのも、研修のメリットです。

広瀬講師:ジャイロ総合コンサルティングの場合、ベースとなるカリキュラムはありますが、お客様の一番のニーズを伺った上で、それを反映させています。
人事の方が言いたいことを私たちが代弁するとか、アプローチしたい課題に直結する演習を入れるといった提案も可能です。

パワハラ問題に取り組む企業に向けて

廣瀬講師:ハラスメントの課題は、企業によってさまざまだと思います。それぞれの状況に合わせた内容と順序で提供させていただくことで、より実のあるものになるでしょう。
お悩みや課題があれば、ぜひそのままお伝えいただけたらと思います。

片桐講師:研修で得た気づきをスタート地点に、それぞれの企業の課題を解決できるものだと信じています。「こんな企業文化をつくりたい」「こんな風に人を育てていきたい」といった望ましい状態・ゴールに向けて、私たちが持つ知見や視点を取り入れていただきたいです。

橋野講師:私は、ハラスメントは個人ではなく、組織の問題として捉えています。ハラスメントの行為者、被害者だけでなく、見て見ぬふりをしている周囲にまで関わってくるでしょう。直接ハラスメントの訴えがなくても、できることはたくさんあります。「コミュニケーションの勉強会」のように、「ハラスメント」をいう名前を出さなくても取り組みは可能です。組織の問題として、取り組んでみてはいかがでしょうか。

最後に

セミナーの終盤では、渋谷雄大講師によって、パワハラの行為者に見られる8つの傾向が語られました。

  1. ハラスメントかそうでないかの切り分けができていない
  2. 知識がなく、自分が行為者だと気付いていない
  3. 自分がしていることはハラスメントだと気付いてはいるが、どう直したらいいのかがわからない
  4. 過去の社風に染まっており、変えたくても変えられない、またはそれが当たり前になっている
  5. ハラスメントの知識はあるけれど認識をしていない
  6. 自分を変えようとしてみたけれど、上手くいかなかった
  7. 古い考えに固執し、それ以外のやり方に懐疑的
  8. 自分を変えるつもりはない

行為者は上記のパターンが複合している場合が多く、これを自社で判断するのは難しいでしょう。また、それぞれに有効なアプローチも異なります。根が深い問題がゆえ、研修などを通して何度も改善の取り組みをする必要があるでしょう。

次回の「パワハラ防止法対策セミナー」は、10月7日に開催予定です。日頃悩んでいることや、疑問に思っていることをプロの講師に質問できる絶好の機会。ぜひ、法律施行に向けての準備としてご参加ください!

ハラスメント防止法対策セミナー〜パワハラ加害者が生まれる企業の特徴〜

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