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進化するセミナー!第3回「パワハラ防止法対策セミナー」をレポート

2021年6月2日、第3回目となる「パワハラ防止法対策セミナー」が開催されました。いよいよ来年には全企業が対象となるパワハラ防止法の影響を受け、世の中でハラスメントへの関心は高まるばかりです。今回は、新たに橋野由利子講師を迎えてお届けしました。

セミナーの概要

テーマ:パワハラ防止法対策セミナー〜パワハラが生まれる企業の特徴〜
対象:企業の人事・コンプライアンス担当者様など
所要時間:約2時間(15時〜17時)

今回は、第1部の基調講演「本当は怖いハラスメント」を片桐由紀子講師が担当。
さらに第2部では、廣瀬由美講師、片桐由紀子講師と、今回初登壇となる橋野由利子講師の3名によるパネルディスカッションが行われました。

セミナーのレポートはこちら
【第1回目】
【第2回目】

第1部:講義【本当に怖いハラスメント】

片桐由紀子講師による基調講演では、ハラスメントの前提となる定義や、本質的な怖さについて語られました。

増え続ける〇〇ハラスメント

ハラスメントの多様化が進む現在。
問題として取り上げられる機会が多いセクシャルハラスメント、パワーハラスメント、モラルハラスメントのほか、マタニティーハラスメント、ケアハラスメント、ソーシャルハラスメント、スクールハラスメント、ジェンダーハラスメントなど、近年は数え切れないほどの種類があります。

ハラスメントは、大きく分けて3つに分かれると言われています。

  1. パワーハラスメント
  2. モラルハラスメント
  3. セクシャルハラスメント

それぞれの要素が複雑に絡み合い、様々な種類のハラスメントが派生しています。

まずは定義を知ることが大切

「ハラスメントを定義するにあたり、どう区分すればいいのか?」
「社内でハラスメントが発生した時に、どこまで、どのように対応すればいいのか?」
という悩みを抱える企業は多いのが現状です。

ハラスメントの判断をする上で、まずはパワハラ・セクハラそれぞれの定義を明確にしておくことが大切です。

パワーハラスメント
職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職務環境を悪化させる>行為をいう。
(平成24年 厚生労働省 「職場のいじめ・嫌がらせ問題に感っする円卓会議ワーキング・グループ報告」による)

セクシャルハラスメント
職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害される状況をいう。
(出典:男女雇用機会均等法第11条)

「ハラスメント」と一括りで語られることも多いパワハラ、セクハラですが、それぞれ起こる要因が大きく異なるのが特徴です。
パワハラは「組織風土や環境」によるところが大きく、セクハラは個人の性癖や衝動的なものによって起こることが多い傾向にあります。

ハラスメントが企業にとって致命傷になるケースも

パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)は、2020年の6月1日に大企業を対象に施行されました。
さらに、2022年4月1日からは中小企業も対象となり、ハラスメント防止への取り組みが義務となります。

こうした法整備が進んでいることも手伝って、世の中では「ハラスメント」に対する目が一層厳しくなっています。
SNSが発達し、個人が媒体のような役割を果たすようになった現代において、社内のハラスメントを野放しにしておくことは、企業にとって致命傷にもなりえるのです。

例えば、ハラスメントが発生した際に十分な対策をとっておらず、厚生労働大臣の勧告に従わなかった場合、今後はその旨が公表される可能性があります。
そうなると、世間からは“ブラック企業”という目で見られることは避けられません。企業の社会的信用を著しく下げ、最悪の場合顧客離れ、従業員離れの原因となる危険性もあります。

これからは、ただ商品が良いというだけで業績をあげるのが難しい時代に突入します。ものを選ぶ際、「会社のイメージ」も重要な判断材料になるでしょう。

今後の研修に求められること

セミナー&研修.netでは、当事者意識を醸成するためのハラスメント研修を提供しています。

  • やったが最後という「加害者にとっての被害」を具体的に説明し、恐怖を「加害防止の動機付け」とする
  • 「アンガーマネジメント」などの加害者にならないための具体策の提示
  • ケースメソッド演習を通じて「考えるくせ」を身につける
  • センス・オブ・デンジャー(危険に対する感性)の醸成

詳しくは、第一回目のレポートへ!

ハラスメント事案が起こると被害者はもちろん、加害者自身や会社、家族などの周囲が大きな傷を負います。
起こさないための企業文化や環境を整えていくことが大切です。

第2部:パネルディスカッション

第2部のパネルディスカッションでは、廣瀬由美講師、片桐由紀子講師、橋野由利子講師がこれまで見聞きしてきた事例や、自身の体験をもとに議論を展開。
第1回目、第2回目には登場しなかったキーワードについて語られたほか、zoomのチャット機能を活用して受講者とのコミュニケーションも活発でした。

行為者本人に自覚がないケース

廣瀬講師:ご自身の経験やこれまで見聞きしてきた中で、一番印象に残ったエピソードを教えていただけますか?

橋野講師:「上司からハラスメントを受けていることをさらに上の人に相談したら、相談相手もパワハラ上司だった」という経験ですね。上に行けば行くほどパワハラがひどくなっていたんですよ。嫌な上司だったけれど、仕事ができる方だったので、訴えるのに葛藤がありましたね。

廣瀬講師:片桐講師はいかがですか?

片桐講師:私の場合、いわゆる「人間クラッシャー」の元に配属されたことがあります。ターゲットになった人はことごとく休職してフェードアウトしていくという…
そこに「あなただったら大丈夫でしょう」と、私が配属されたんです。なんとかなると思っていたのですが、実際に配属されてみると「こうあるべき」の押し付けがひどかったり、朝から不機嫌で挨拶しても返してくれなかったりと、いろいろありました。
びっくりしたのが、憔悴している私を見たその上司から「カウンセリングを受けてみたら?」言われたんですよ。それが結構衝撃でした。

廣瀬講師:その方、自分でパワハラをしているという認識はあったのでしょうか?

片桐講師:相手が心身に変調を起こしていることには気付けても、自分の何がそうさせているのかはわかっていなかったと思います。その後休職したのですが、復職後に「あれは自分のせいじゃなかったよな?」と言われたので…

廣瀬講師:それが一番衝撃ですね!
私が経験したのは、お二人のケースのミックスですね。
以前に勤めていた会社で、中間管理職として配属された上司からハラスメントを受けたことがあるのですが、私を徹底的に排除するような動きをされました。さらに上にいた上司が、間に入ってきた上司の味方になってしまって、何を言っても「お前が悪いんだろう」とはねつけられてしまったんです。
あらゆる手を使って部署を異動し、新たな配属先では順調に仕事を続けていくことができたのですが、それを見た以前の上司が「今の廣瀬だったら一緒に働きたいよ」と言っていたそうなんです。
片桐講師のケースと同じで、相手に異変があったのはわかるけれど、自分のせいだとは思っていないパターンですよね。ハラスメントを受けた当事者が上に相談できないというのは、精神的にかなり追い詰められてしまうと思います。

橋野講師:よく耳にするのは「社内の相談窓口には相談しづらい」という声ですね。
私は、外部の相談窓口をさせていただいているのですが、そこには相談が来るんです。それでも状況を改善するためには会社に言わないと動いてもらえないから「会社に話しましょう」と言うと、皆さん「怖くて話せない」とおっしゃいます。
今はテレワークが増えていますが、そこで起こるハラスメントって周囲はなかなか把握できません。会社は、安心して相談できる場所を作っていくことが重要ですね。働き方改革やウィズコロナのひとつの課題だと思います。

廣瀬講師:以前に講師としてコンプライアンス研修をさせていただいたときに、参加者で事例を共有する場を設けたんですね。
そこで出た「若い女性が上司から無理に誘われた」と言うケースに対して、年配の方から「本人が断らなかったんだから、その気があったのでは?」「断ればよかったのでは」と言う声が出たんですよ。
「その場では恐怖で気が動転してしまい、判断力が失われる」という点に目がいかないことが多いのだなと改めて感じました。

片桐講師:その時の恐怖がどんな状況なのかは、一人ひとり違いますよね。経験を積んでいたら頑としてはねつけられるかもしれませんが、若い女性の場合そうはいかないことも多いでしょう。
「自分の娘や奥さんがハラスメントを受けたら」など、身近な人間がそんな目にあった時にどう思うのかを問うてみたいですね。

廣瀬講師:「家族がそうなったら」という視点を新たに投げかければ、ハッと気づいてもらえるかもしれませんね。

女性から女性へのハラスメント

橋野講師:最近は、女性同士で足を引っ張り合ういじめや嫌がらせのケースが増えているんです。これって、意外と頑張っている女性が行為者になるパターンが多い気がするんですよ。「私はこんなに頑張っているのに」っていう感情のはけ口として、ハラスメントになりかねないきついことを言ってしまったり…
みなさん、女性同士のハラスメントってありましたか?

片桐講師:ありましたね。女性のハラスメントは「怒り」と「ストレス」によるところが大きいのかなと思っています。
よく、怒りは二次感情だと言われるじゃないですか。根本には一次感情があって、認められたい気持ちや寂しさ、嫉妬心などが怒りとして表出するというのが、アンガーマネジメントの原則ですよね。
あともう一つが、ストレスですよね。女性は妻だったり、母だったり、あとは介護だったりとか、いろんな役割を持つ中で抱える行き場のないストレスを、自分より弱い立場の人にぶつけてしまうことが多いのかもしれません。
部下や後輩が自由に振る舞っているように見えると、「なんであの子は」みたいに標的にしてしまったりとか…

廣瀬講師:これからさらに女性の社会進出が進むと、女性比率も増えていきますから、この問題は今のうちから考えておくべきことですね。

片桐講師:さらに言うと、女性から男性のパターンももありますよね。まだまだ表面化はしていないものの、最近は妻から夫へのDVが水面下で増えているそうなんです。男性だから、女性だからというジェンダーで分ける時代ではないのかもしれないですね。

廣瀬講師:働くすべての人がハラスメントについて考え、自分がどんなケースで行為者になりえるのか、どうしたら抑制ができるのかなどを定期的に考える必要があると思いました。それぞれ価値観が違うというのをお互いに共有することがこれから重要になりそうですね。

橋野講師:多様性を受け入れるって大事ですよね。ダイバーシティ化の取り組みの中でハラスメント対策の要素を入れ、ことあるごとに啓蒙すると意識付けがしやすいのではないでしょうか。

廣瀬講師:ことあるごとにって重要ですね。習慣的にその情報に身近に触れる、といいますか…

片桐講師:全体で受ける研修の良さって、共通言語ができることだと思うんです。みんなが同じ言葉や用語、価値観、何を大切にすべきなのかを共有する時間であり、共通言語を持つことによって、万が一そういう状況が起こったとしても周りの目ができます。それこそが人の正義感、道徳観の醸成に繋がるはずです。

感情のコントロール術を身につける

廣瀬講師:チャットで「アンガーマネジメントについて教えていただきたい」というご質問をいただきました。橋野講師は専門分野のひとつだと思うのですが、企業様で取り入れてうまくいった好例などはありますか?

橋野講師:アンガーマネジメントというより、私は「怒りのコントロール」としてお伝えしていますが、怒りの根源を把握することが大切です。
腹が立っているときに、体のどこに熱を感じるのかを観察して、怒りが発生した時に自分がどんな状態になるのかを知ってもらうんです。「自分って腹が立った時にこうなるんだ」と気付き、怒りを抑えられるようになった例もたくさんあります。
実践すれば効果はあるので、できれば一部の人だけじゃなくて、みんなでやってみてもらいたいですね。リーダーが覚えて、社員の中で広めて身近にやっていくのもありですよ。

廣瀬講師:それはいいですね。熱を感じようとすると、「どこだろう」と能動的になれるので、効果がありそうです。

ハラスメントの境界線とは

片桐講師:最近では、上司の立場にいる方も「これ指導なのか、ハラスメントなのか」問題に悩んでいらっしゃいますよね。

廣瀬講師:「ここからはハラスメント」「これはハラスメントじゃない」みたいな線引きということですよね。

片桐講師:ハラスメントかそうでないかというのは、業務的な指導であったり、相手の安全を守るために大声を立つなどははハラスメントではないと定義されています。
認定が難しい場合は、それこそ社内でワークショップなどを通して話し合ってみるのが良いでしょう。

橋野講師:私も「こういうケースはどうですか」というご相談をよくいただくのですが、本人がダメージを受けているかどうか、そして事実なのかということに加え、第三者の聞き取りもします。
中小企業も法令化に合わせて、人事や管理職である程度の線引きしておくことをおすすめします。線引きがないと、後で事例が出た時に判断できないんですよ。
そして、ハラスメントの発見のためにアンケート調査は定期的に実施した方がいいと思いますね。「ハラスメント調査」が仰々しいと思うなら、「コミュニケーションに関する調査」とか「働きやすい職場環境について」という名目にして、その中にハラスメントに関する設問を埋め込んでいくのも一つです。
さらに言えば、もし自社でストレスチェックをされているのなら、集団の傾向を見ればハラスメントがあるかないかが大体わかるんですよ。「ストレスチェックの集団分析結果に傾向が出ているから全員にヒアリングします」と、インタビューしまうというきっかけに使うのもありです。

廣瀬講師:以前私が担当させていただいた企業では、簡単なアンケートチェックを毎月、全社員対象にされていました。その結果に大きな変化があれば、何かが起こっていると判断するアラートの役割を果たすんです。
特定の結果が出た人だけを集めて、社外講師としてセッションを担当させていただいたこともあります。こういった仕組みを取り入れるのも、一つの発見の仕方だと思います。

片桐講師:部下の様子に目が届きにくいオンラインでは、なおさらそういう仕組みが必要になるかもしれないですね。簡単なアンケートでもいいのでヒアリングする機会を作れば「ちゃんと見てくれているんだな」という安心感や会社への信頼につながると思うんですよね。万が一何かがあったとしても、ちゃんと拾い上げてくれる環境が整っていると帰属意識にもつながると思います。

気付きを促すための研修

廣瀬講師:実際にもし私たちが、ハラスメントに対する気付きの場として研修を提供させていただくとしたら、どうアプローチしていくのがいいと思われますか?

片桐講師:やはり共通言語を作るのは大切ですよね。冒頭にもあったように、やっている側はやっている意識がないケースも多いです。そこで「他の企業での事例なんですけどね」と話し、みなさんならどういう風に解決していきますか、と投げかけたり。そこをディスカッションできるワークは必要だと思いますね。

廣瀬講師:企業でもし問題になっている課題があるなら、そこにさりげなくフォーカスを当てた事例を取り上げてみるのも効果的かもしれないですね。橋野講師はいかがですか?

橋野講師:研修のグループの中にハラスメントの行為者がいる場合、事例を出すことを難しくも感じるのですが、近いものを持ってくることで「普段こういうこと言ってるよね」と気づいてもらえるケースもありますよね。「気付く」ことが重要で「もしかしたら自分もハラスメントをしていたかも」と思ってもらうだけで変わると思います。

パネルディスカッションを経て

廣瀬講師:今回のディスカッションの所感を伺えますか。

片桐講師:ハラスメントには、根深い部分もあるけれど、みんなの理解を得ることによって予防もできると思います。被害者にも加害者にもならないような職場の環境を整えていくために、私たち講師に何ができるのかを改めて考える機会になりました。

橋野講師:人と人って難しいですよね。ささいな一言が気になってしまうこともあると思うので、そこは感情コントロールが必要だし、しっかりとした知識をつけることも大切です。
管理・監督職の方は叱るとパワハラの違いを理解しておく必要があるし、一般職の方は何気ない言葉が時には相手を傷つけてしまうと理解する必要があります。感情コントロールと、理解の2本立てて進めていくのが効果的なのではないでしょうか。

廣瀬講師:今回初めてファシリテーターを務めさせていただき、改めて勉強になる話がたくさん聞けました。私は講師であり、研修アドバイザーでもあるので、企業様にアドバイスする幅を広げることができたかなと思います。

最後に

回を重ねるごとに、内容もどんどん変化する「パワハラ防止法対策セミナー」。次回は8月3日に開催予定です。無料でご参加いただけるので、これからハラスメント対策に着手する方、より知見を深めたい方はお気軽にご参加ください。

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