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パワハラ対策が生産性向上の鍵に。第2回「パワハラ防止法対策セミナー」

 

2021年4月21日、第2回目の「パワハラ防止法対策セミナー」をオンラインにて実施しました。来年度より、規模を問わずすべての企業にパワハラ防止法が適用されます。社内でどう対策を進めていくべきか悩んでいる担当者も多いでしょう。

パワーハラスメントの横行はコンプライアンスの問題だけにとどまらず、会社の生産性をも左右するものです。セミナー内では、パワハラ対策をすることが企業にどのような影響をもたらすのかについて語られました。今回は、第2部で行われたパネルディスカッションの内容をレポートします。

セミナーの概要

テーマ:パワハラ防止法対策セミナー〜パワハラが生まれる企業の特徴〜
対象:企業の人事・コンプライアンス担当者様など
所要時間:約2時間(15時〜17時)

第1部の基調講演「本当に怖いハラスメント」と第2部のパネルディスカッション、質疑応答の3部構成。

第1回目のセミナーから引き続き、大木ヒロシ講師、片桐由紀子講師、廣瀬由美講師の3名によって、ハラスメントが企業にもたらす影響や、有効な対策についてパネルディスカッションが行われました。

【第1回目のセミナーレポートはこちら】

パネルディスカッション

パネルディスカッションでは、前回挙がった「許可をすること」「パワハラ対策が効率化になる」のほか、「ダイバーシティ」などの新しいキーワードも登場しました。さらに進化した討論の内容をお届けします。

ハラスメントを乗り越えるために必要なことは?

いよいよ2022年からは中小企業もパワハラ対策法の対象となります。とはいえ、教育に費用をかけるのが難しい企業も多いのではないでしょうか。

「ハラスメントは、結論的に言うと起こってしまうものです。上の世代が『大したことではない』『それが当たり前でみんなが通ってきた道』と思っていることが、若年層にとってはパワハラになり得ますよね。精神的な傷つき方は、育ってきた環境でも違うし、男女でも違うのではないでしょうか。

これからは、結婚や出産を経て復帰した女性など、様々なバックグラウンドを持つ人が新しい仕事人として登場します。そういう人たちに上手に働いてもらえる企業は、ものすごく効率化できるのではないかと思っているんです。

とくに中小企業は、教育にお金がかけにくい。だからこそ、一通り経験を積んでベースがしっかりとした人材を雇い、上手に働いてもらうことがプラスになのではないでしょうか。お二人はどう思われますか?経験や事例などをお聞かせください」(大木講師)

「私は30歳ぐらいのとき、美容ディーラーをしていました。お客様は女性ですが、会社の中は完全な男性社会。20人男性営業マンの中で唯一の女性だったんです。

私の発言のちょっとした言葉尻を捉えて、下世話な話につなげられたことがありました。言葉一つ取っても捉え方が違いますし、男性ばかりの環境は温床になりやすいですよね。

腹立たしい思いもありましたが、そんなことを言っている人たちよりも営業成績を伸ばそうと思いました」(片桐講師)

「なかなかそういう風に考えらない人もいると思いますが、片桐先生はどうしてセクハラをはね返せたのでしょう?」(大木講師)

「良い意味での人生経験を経た30歳だった、というのがあります。

前回のセミナーでも話題に出た『嫌なものは嫌って言っていいんだよ』と認めてくれる人がいることがハラスメントを乗り越えるために必要だと思います。みんなの自己重要感をいかに高めていくのがポイントではないでしょうか。

自己重要感を高められるようなセミナーや第三者機関が『自分自身を守ってあげて』『あなたのせいではない』と伝えてあげることが大事なのかなと思います」(片桐講師)

「様々な経験を経たからこそ、不当な扱いをはねのけられるというのが大きいですよね。もしも社会に出たばかりの頃にハラスメントを受けたら、多くの人はめげてしまうのではないでしょうか。経験を重ねた今の自分から、20歳の頃の自分に声をかけてあげるような内容の研修ができたら素晴らしいですね。

廣瀬先生は研修アドバイザーとして企業の方とコミュニケーションをとられていますが、どんな研修をやれば効果的だと思いますか?」(大木講師)

「色々な方とお話ししていて感じるのは、パワハラは体制が変わった時に起こりやすいということです。

私自身も、パワハラにあったのは直属の上司が変わった時でした。業務内容は以前と同じでしたが、上司が自分だけに発言をさせない、必要以上にダメ出しをするなどをされました。周りからも心配されるような環境に急に陥り、当時は戸惑っていましたね。

直属の上司のさらに上の上司には、それまでは評価してもらっていたのですが、ハラスメントをしている上司の言葉だけを信じるようになり、受け止めてもらえませんでした。

一番しんどいのは『受け止めてもらえる場所がない』と感じてしまい、諦めてしまうことです。そんな時に、人は心が折れかけるのではないでしょうか。私はこの出来事がきっかけで、産業カウンセラーの資格を取りました。

100%完璧な人はいません。プレイングマネージャーの中には、業績は良いけれど部下のマネジメントには向かない人が実はたくさんいます。業績を評価され、マネジメントの立場に引き上げられてしまうのです。

そういうケースこそ、いつも以上にこまめにフォローをしたり、研修を活用して気づきを促すことが大切だと思います。上からの意見と下からの意見の両方が見える形で、価値観や受け止め方の違いをこまめに共有し合う場が必要ですね」(廣瀬講師)

多様性を認め合うこと

ディスカッションの中では「お互いの考え方や捉え方の違いを認め合うこと」の重要性について語られました。

「さらに上の上司が、廣瀬先生の声に耳を貸さなかった仕組みや環境。日本はこれがものすごく多いのです。硬直した縦社会で、横の広がりがないことからも、調整役をしてくれる第三者的な立ち位置の機関が必要だと感じます。

行政の指導では「社内に相談室を置いて…」という動きがあります。しかし若年の社員からすると、相談室さえも上司と通じているように思えてかえって打ち明けづらい。

そこはやはり、会社の外側の第三者に話を聞いてもらうことがすごく重要ですよね。廣瀬先生のお話は、日本の会社がどうあるべきかをとてもよく表しています。これまでは効率重視の縦社会で成立していましたが、横型に変化しなければ新しい可能性は生まれません。縦社会がハラスメントの温床になっています。

防止対策として、中小企業は実際どんなことをやるべきだと思われますか?」(大木講師)

「私は、NLPという心理学を学んでいるのですが…人間ってつい、他者も自分と同じように考え、感じているであろうという前提を持ってしまうんです。

上司からすると『なんでこの部下は自分の言っていることがわからないんだと』思いますし、部下の立場から見れば『どうして上司は自分のことをわかってくれないんだろう』と感じてしまいます。それぞれの話を聞いてみると、どちらにも賛同できる点があるから余計に難しいんです。

みんなが同じ情報を受け取ったとしても、違う感じ方をするのだと知ることが第一歩です。とても大切なことなので、コミュニケーションの研修でもこの話はしていますね」(片桐講師)

「上司と部下、それぞれの考え方をすり合わせることに時間を使うべきだということですね。

広瀬先生は、同じ質問に対してどんなご意見ですか?とくに中小企業の場合だと、大企業ほどコンプライアンス対策にがっつり取り組めない会社が多いと思うのですが…」(大木講師)

「第三者機関を活用するのは、有効な手立てだと思います。

実際何をやっていくのかというと、まずは役員も一般社員も関係なく全員が一同に会して、同じ情報を取得します。全員が『ハラスメントがどれだけ怖いもので、どんな危険があって、どのように会社の生産性を下げるものであるのか』を学んでもらいます。これは、全員が同じ知識を持っていることを周知の事実にするのが目的です。

その上で、自分に当てはめて考えてもらうのが有効です。もし自分がハラスメントをしてしまうとしたらどのパターンなのか、意識しながら講義を聞いてもらいます。

グループワークでは、あえて全ての階層の社員を混ぜてグループを作り、様々な立場の意見を聞けるようにします。Zoomのブレイクアウトルームは、あえて自動振り分けにするといいですよね。

人はどうしても、自分の中にある価値観が全てだと思ってしまうものです。様々な考え方や捉え方があるということを社内で共有し、明日から何に気をつけていくか“決意表明”をしてもらいます。周りの人に『あの人、ああ言っていたよね』という目で見られるのも、行動変容につながると思います。

研修は終わってからが重要です。お互いに注意喚起ができる環境を作り上げ、定期的に意識づけを行っていく。そんな第三者機関の活用方法も一つだと思います」(廣瀬講師)

「ダイバーシティにもつながりますね。知ることで、お互いの価値観を認められる。『理解はできないけど、彼がそうなんだったら許そうか』と思えるでしょう。

『意志が弱いからハラスメントを受ける』という考えについては、とくにベテラン社員にその傾向が強いと受講者の方からご意見がありました。相手の心の傷にいかに思いを至らせるかがとても大事ですよね。みんなが話して共有していくことに価値があるし、そういう研修を目指せたらいいと思います」(大木講師)

ハラスメントを受けるのは弱い人?

全企業に向けて法律が施行されますが、日本では依然としてハラスメントに対する理解が浅い現状があります。その点についても様々な意見が出ました。

「昔はうつ病は怠け病と言われていました。ハラスメントに負けた人が弱いと思われてしまうのも同じことですよね。お二人は、そのあたりの理解はどうしていくべきだと思いますか?」(大木講師)

「私は大企業の在籍時にモラハラにあったことがあります。『人間クラッシャー』と呼ばれる上司の元に配属されて…仕事が好きでしたが、会社に行けなくなってしまいました。

休職期間を経て復帰したのですが、その時の産業医の先生に『一度自律神経失調症になったら、その爆弾は一生持っていると思ってください』と言われたことが、今でも自分の中に残っています。

一度そうなってしまうと、何かの引き金で戻る可能性がある。それはハラスメントを受けた事実を背負って生きているということ。被害者は、治療が終わっても終わりではありません。一生傷を抱えなければならないのです。

行為者には、いろんな意味での責任があります」(片桐講師)

「ハラスメントは『受けている側が何かを上手くやれなかったから、最後まで追い詰められてしまった』では片付かない問題だと感じています。

私の場合は『このままいくと危ない』と自分で気づきました。当時いた会社はかなりの縦社会でしたが、ありとあらゆる手を使って異動する道筋を作り、その場から離れました。離れた後は、仕事に対する成果もまったくと言っていいほど変わりました。

可能な限り、その環境から離れる。企業もその人がもっと活躍できる場所に移動させる。人材を活用するのならば、その場から動かすという対策を組織ぐるみでやっていくべきではないでしょうか」(廣瀬講師)

「ハラスメントは法令上だけの問題ではありません。これを乗り越えたら、新しい人材に上手に働いてもらえる企業になるはず。

むしろ一生懸命働く人たちが、ハラスメントに追い込まれている気がします。ハラスメントについて理解を深め、真剣に取り組んでいくことは、業績が上げる一番重要なポイントではないでしょうか。

意志の疎通を深めてチームを作り、業績が向上する。お互いにリスペクトし合う関係を築いていけたらいいですね」(大木講師)

質疑応答

当日は参加者の方からも多くの質問が寄せられました。ここではその一つをご紹介します。

「TELハラという言葉がありますが、最近入社した社員が実際に電話対応ができなかったケースがあります。電話対応の業務によってうつ病と診断されたら、それはパワハラになってしまうのでしょうか?」という相談でした。

これに対しては、大木講師からアドバイスがありました。

「仕事で大切なことは助け合い。会社にギフトカルチャー(教え合うカルチャー)を作っていくことが解決につながります。ちゃんと電話の対応のやり方を教えてあげれば、絶対にパワハラにはなりません。

パワハラは、本人だけでなく周囲が認めて認定されるものです。本人一人だけが騒ぎ立てても成立はしません。助け合うこと、支援することを組織として考えることが大切です」(大木講師)

ここでは、セミナー全体の進行を務めた渋谷雄大講師から補足説明がありました。
「ハラスメントは『優越的な関係に基づいて強制力を働かせること』『身体的・精神的苦痛を与えること』『業務の適正な範囲を超えて行われること』の3つの要件を満たさないと成立しません。業務の適正な範囲内の電話対応であれば、ハラスメントにはならないでしょう」(渋谷講師)

また、大木講師からは下記のような意見も出ました。
「本当にイノベーティブな環境に会社が成長するためには、あえて使いにくい人を入れるべきです。そういう人材を活用できたら会社は伸びます。

また、調整能力を高めていくのが出世するコツではないでしょうか。上司が部下をリスペクトすれば、部下は必ず上司をリスペクトするもの。これからは“報連相”ではなく、相談される自分になる必要があります。部下が相談しに来てくれるようになったら、コミュニケーションが円滑にできているということです」(大木講師)

これからの研修に向けて

セミナーの最後は、各講師のコメントで締めくくられました。

「ハラスメントがなくなることは、会社の業績が大幅に上がることだと理解してもらいたいです。一人ひとりの時間あたり効率が上がり、事業内容が本当に良くなる。

『法律だからやる』ではなく、前向きな姿勢でハラスメントに対処していただきたいと思っています。ダイバーシティな人々を調整して、上手に仕事を回せるようになったらすごいことです。いい会社にしたい、儲かる会社にしたいと思えばハラスメントは起こりません。

心の傷は見えないけど深いものです。それを直すのは、お互いの思いやりしかないでしょう。それができたら業績が上がります。今後は、そんな研修を考えていきたいですね」(大木講師)

「ハラスメントの背後には別に課題が潜んでいるケースもあります。その裏にどんな問題あるのか、1社ずつ課題は違っているはずです。それぞれに沿ったプログラムを作り、寄り添っていきたいです」(廣瀬講師)

「ハラスメントは、一面では語りきれないものだと思います。正しい知識を持って、人と人との関係をどのように築いていくかが大切ではないでしょうか。大木先生のお話にもあったように、お互いをリスペクトし合い儲かる会社を作るためにも、セミナーが考えるきっかけなれば嬉しいですね」(片桐講師)

「若い世代と年配の層で、事実の捉え方が違います。広瀬先生が言っていたように、年代を混ぜて研修をすることが大切だと感じます。解釈をみんなですり合わせることが今回の肝になるでしょう。研修は、解釈を一致させる行為として役立つはずです」(渋谷講師)

最後に

前回と同じ顔ぶれであったにもかかわらず、パネルディスカッションの内容は大きく変化していました。回を重ねるごとに、さらなる進化が期待されます。次回は2021年6月2日(水)に開催予定です。無料で参加していただけるので、ぜひお気軽にお申し込みください!

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