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「パワハラ防止法対策セミナー」で得た新たな気付きとは?オンラインセミナーをレポート!

2021年4月6日、オンラインにて「パワハラ防止法対策セミナー」を実施しました。今回の企画は、2022年4月以降、パワハラ防止法が企業規模を問わず全企業に適用になることを踏まえての開催です。初の試みでしたが、講師陣、参加者がそれぞれの意見や体験談を持ち寄ることで、新たな気づきを得られる貴重な機会となりました。

セミナーの概要

テーマ:パワハラ防止法対策セミナー〜パワハラが生まれる企業の特徴〜
対象:企業の人事・コンプライアンス担当者様など
人数:7名
所要時間:約2時間(15時〜17時)

プログラムは、第1部の基調講演と第2部のパネルディスカッション、そして質疑応答の3部構成でお届け。各講師がこれまでのキャリアの中で感じたことや、研修の現場でクライアントから寄せられた声などを踏まえて、これからますます重要度が高まるハラスメント対策についての意見を交わしました。

第1部:講義【本当に怖いハラスメント】

第1部は、大木ヒロシ講師による基調講演。今回は「共に考え、『しない』『させない』ハラスメントOP講座」という題目で、ハラスメントの要因・影響などについて語りました。

深刻化するハラスメントの要因

ハラスメントはどんどん多様化しています。「〇〇ハラスメント」という言葉がどんどん生まれていく現状。深刻化の要因は、エイジギャップ(世代間のギャップ)にあると考えられます。

自分と異なる世代の言動に対して「信じられない」と感じたことはありませんか?実はこれが、ハラスメントの種でもあるのです。世代によって価値観のギャップがあり、一緒に仕事をする場ではこれがコミュニケーションのズレを生じさせます。

ハラスメントが企業や個人に与える影響

パワハラ防止法が義務化されますが、ハラスメント対策は健全な組織運営にとって大切なものです。ハラスメントが要因となり、会社の業務効率が大幅に下がるケースや組織が破綻しそうになるケースなどが散見されます。

ハラスメントが企業にもたらす影響として、下記の例が挙げられます。

  • ブラック企業の烙印によって、従業員の業務意欲が大幅に低下
  • 会社としての社会的信頼を著しく失墜
  • ハラスメントはSNS等で拡散する事も多く、もはや隠すことはできない
  • 行為者が気づかずに進展し事件化するケースも多い

パワハラ防止法には今のところ罰則はありませんが、明るみに出ればブラック企業の烙印が押されるのは間違いないでしょう。そうなると、採用への悪影響、従業員の意欲低下、取引先離れ、顧客離れなどの数々の悪影響が懸念されます。企業内には様々な雇用形態の従業員が働いており、一人一人がSNSによってメディア機能を持っていることを忘れてはなりません。

ハラスメントは、行為者(加害者)が気付かずにしている場合が多々あります。企業風土による慣れが作用し、自分がハラスメントをしているという認識が薄いのです。しかし、被害を受けた側が声をあげれば、当人にそんなつもりはなくても加害者になってしまいます。「ハラスメントをしない」という個人の意識に加え、「させない」ための組織風土を作ることが大切です。

なぜハラスメントは減らないのか?

大きなくくりにするとコンプライアンスに属するため一緒にされがちですが、セクハラとパワハラは起こる要因が全く異なります。セクハラは性癖や衝動という個人の要因によるところが多く、パワハラの発生は組織風土によるところが大きいのが特徴です。

いずれにせよ、ハラスメントの行為者は大ごとになるという自覚なく行っている場合がほとんどでしょう。パワハラの研修を実施する際は、受講者が「自分ごと」として捉えるような促しが必要です。

セミナー&研修ネットでは、一般論として「ハラスメント行為をしてはいけません」と説くのではなく、加害防止の動機付けをすることに重点を置いています。

〈従来の研修〉
・ハラスメントの類型、法規制などの内容の解説が中心
・「常識として、やってはいけません」「会社のためにやってはいけません」という一般論がベース

当事者としては、自分ごととして捉えるのが難しいでしょう。

〈セミナー&研修ネットのプログラム〉
・やったが最後という「加害者にとっての被害」を具体的に説明し、恐怖を「加害防止の動機付け」とする
・加害者にならないため「アンガーマネジメント」などの具体策の提示をする
・ハラスメント研修はあなたのため!ケースメソッド演習を通じた「考えるくせ」をつけ、センス・オブ・デンジャーの醸成する

ハラスメントが行為者やその家族の人生に与える影響を明確にし、自分ごととして捉える動機付けを行います。さらに、各企業に合わせてカスタマイズしたケースを作り、それを全員で徹底的に考えてもらうことに重きを置いています。これらの方法によって、ハラスメントに対する当事者意識を育みます。

第2部:講師3名によるパネルディスカッション

第2部は、基調講演を担当した大木講師に加え、片桐由紀子講師、廣瀬由美講師を迎えた3名で、ハラスメントの事例や対策についてパネルディスカッションを行いました。

ハラスメントが、女性の社会進出を妨げている?

冒頭で大木講師が、政府が2003年に発表した「2020年までに指導的地位の女性比率を30%に」と掲げた目標である「2030」が先送りされた件に触れました。

これに対し「女性を役員にという動きがありますが、実際はなりたくない人が多い。上に行けば行くほど、男性役職者からパワハラを受けるという現状があります」(廣瀬講師)、「主なターゲットが女性である企業でも、女性の取締役や役員はほとんどおらず、ロールモデルが不在。なった先に何があるんだろうという不安や恐れが先に出て次に進めない、いわゆるガラスの天井です。企業の上層部にはまだまだ古い価値観を持つ人が多く、変えていくのが難しい。これこそハラスメントが減らない大きな要因だと思います」(片桐講師)という意見が出ました。

「資本主義の男性社会は、不幸になろうがひたすらお金を稼ぐのを良しとする風潮ですが、一方で女性は、幸せに上手によりそう力があるように感じます。そういった管理職・総合職が出ることで、今の時代にマッチした生産性が実現されるのではないでしょうか」(大木講師)

ハラスメントは単なる個人や企業の問題ではなく、「2030」が表すように、社会の発展を妨げる要因ともなり得るのですね。

ハラスメントを防止するためのポイントはどこにあるのか

ハラスメントを起こさないために、企業はどんな取り組みをするべきなのでしょうか。経験に基づいた、三者三様の考えを聞くことができました。

「ハラスメントを起こさないための演習をした際に『私たちが言えないことを講師の方に言ってもらえたことはありがたかった』という声をいただくことがあります。特に女性からこの意見が多い。講師でなくてもいいので、第三者がハラスメントに介入するのが効果的ではないでしょうか。第三者が入ってその問題について考えるのは、一つのやり方だと思います」(廣瀬講師)

「この先日本はどう考えても就労人口が減るので、女性に活躍してもらうよりほかありません。女性同士のハラスメントも多々ある現状の中で、男性が傍観してる場合ではない。そこをどうするべきかも視野に入れ、研修を考える必要があると思います。社長・専務などの権威者はどうしても男性が多いですが、このままでは日本はどうしようもなくなってしまいますね」(大木講師)

「以前に働いていた大企業では、ハラスメントなどの問題があった際に話を聞いてくれる、内線番号のシステムがありました。社内にこのような駆け込み寺的な存在があれば、受けた側のダメージも緩和されるのではないでしょうか」(片桐講師)

小規模な企業はどんな対策をとればいい?

「駆け込み寺」や「第三者」というキーワードをさらに掘り下げました。

「辛さは話すだけで半分になるようなところがありますよね。10人規模のような会社も、これからはパワハラ防止法の対象になります。少人数の組織であっても、先ほど話が出た駆け込み寺のような第三者的な存在があったほうが良いのでしょうか?」(大木講師)

「そこはやはり、第三者的な存在があればいいと思います。悩みがあったら、女性は占いに行ったりしますよね。占い師は赤の他人ですが、だからこそ本音を話せたり、アドバイスをすんなり受けられる部分もあるのではないでしょうか。第三者による相談機関を福利厚生として活用するのはありだと思います」(片桐講師)

「社外のキャリアコンサルタントとして関わらせていただいた企業では、私が社外の人間だからこそ、社員の方が『聞いてくださいよ!』と気軽に気持ちを吐き出せるような場を設けていました。大体、1回目は愚痴で終わるのですが、2、3回目になると『前を向くにはどうしたらいいのか』という方向に変化していきます。小規模の組織は全員が知り合いで、良くも悪くも感情が入ってしまい、つい“アドバイス”をしてしまいがち。相談者の思いをフラットに受け止めるという意味では、やはり社外に窓口を作るべきではないでしょうか」(廣瀬講師)

NOと言える風土を

「ハラスメント(この場合セクハラ)は、まだ年次が浅い女性がターゲットになる場合が多いですよね。『毅然と拒否する』と言っても、どうしてもできない状況が多い。ですが拒否されないと、行為者は『ここまではいいんだ』と無意識で思ってしまいます。『あなたがしたことに対して反抗しなかったからと言って、OKという意味ではないんです』と知ってもらう必要があります。以前とは違って、SNSに書かれたら終わりだというのを、やっている側にどう認識してもらうのかが重要ですね」(廣瀬講師)

「男性は、黙っていると『許された』と勘違いしてしまう。そこで毅然とNOを突きつけることが、結果的に行為者を助けることにもなります。セクハラの場合、同性である女性が『毅然と跳ね除けるのも大切だよ』と上手に伝えることが必要な気がします。女性同士の助け合い、互助を今後は研修の項目に組みこんでみるのもいいですね」(大木講師)

今後のセミナー・研修に向けて

「今回改めて話をする中で、社員全員で受ける研修の中で『毅然と言い返してもいいんだよ』『嫌なものは嫌って言っていいんだよ』という許可を与えるのも、講師としての役割なのかなと改めて考える機会になりました」(片桐講師)

「その会社に合わせてカスタマイズしたケーススタディのテーマを作っていくと、より皆さんがハラスメントをリアルに感じていただきやすくなるのではないかと思います。今後は研修をそういった場にすることができるのではないかと新たに感じました」(廣瀬講師)

「これからどんどんハラスメントは大きな問題になります。女性の力を活かすのは、就労人口の減少という観点から考えても必須でしょう。そんな中で、女性が思いきり頑張れる世の中を作ることが課題ですね。今日はお二人からいい意見が聞けて良かった。このセミナーも回数を重ねて、もっと掘り下げていきたいですね」(大木講師)

参加者の質問により見えてきた課題


プログラムの最後に設けた質疑応答の場で参加者の方から有意義な質問が出たので、ご紹介します。

「ハラスメント研修の実施や相談窓口の設置がスムーズにできるのは、やはり大企業だと思います。中小企業はどうアプローチはどうすれば良いでしょうか。中小企業が対策をうまくやっていくためのアドバイスがあれば教えてください。加えて、企業内では個人による意識の差もあり、本当に研修に参加して欲しい人こそ不参加というケースが多いのも課題です」というご相談内容でした。

これに対し、各講師から下記の意見が出ました。

「中小企業の経営者の頭にあるのは、収益や生産性のことがほとんどでしょう。しかし、ハラスメント対策をすることが生産性の向上につながることに気付いて欲しいところです。人に気持ち良く仕事してもらうのが企業。幹部に積極的になってもらうには、ハラスメント研修が企業の生産性に非常に大きな関わりがあるとわかってもらう必要がありますね。」(大木講師)

「それぞれの受け止め方が多様になってきていますよね。上司も部下も、それぞれの立場の悩みがあるということを、みんなが知るのがスタートですね。」(片桐講師)

「ハラスメントの対策をすることにはこんなメリットがあって、これだけ生産性が上がる可能性がある、と説明して納得してもらう必要があると思います。上層部の方に『やはり取り入れた方が良いと』感じてもらうのが効果的ではないでしょうか」(廣瀬講師)

最後に

初開催にもかかわらず、有意義な議論が行われるセミナーとなりました。今後は、内容のブラッシュアップを重ねつつ定期開催する予定です。無料で参加していただけるので、パワーハラスメントへの知見を深めたい方、これから自社でパワハラ防止法の対策を始める方は、奮ってご参加ください。

次回セミナーの詳細はこちらから

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