「仮説営業力」とはどのようなスキルか


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前回はソリューション営業の必要性についてお話ししました。今回はソリューション営業に求められるスキルの一つである、「仮説営業力」とはどういうスキルなのかをお伝えしたいと思います。

仮説というと、皆さん大袈裟に捉える方が多いようです。確かに、理系の学問で仮説を立てるというと、あらゆる情報を収集し、収集した情報を丹念に時間を掛けて分析したうえで、ほぼ間違いないという仮の説を立てて、実験に臨むことが多いかと思います。

しかし、ここでいう仮説というのは、そこまで丹念に時間を掛けて立てることを意味していません。実際のビジネスシーンにおいては、仮説を立てる以外にもやるべきことは多く、仮説を立てることだけに、時間を割くことはできません。ここでいう仮説は、収集できる情報は限られていることを前提に、そこから自分で推察をして得られる仮の説を予め考えておこう、ということです。

営業活動においては、お客様にアプローチするプロセスは欠かせません。最近では、コロナ感染症拡大防止のために、直接対面での訪問は少なくなりましたが、それでもWEB会議などを利用して、お客様との商談を行っています。お客様のニーズを探る上では、お客様へのアプローチは欠かせない活動となります。

しかし、この訪問活動をどのように行うかによって、営業としての成果が大きく変わります。もっと言えば、営業活動をする前の活動で成果が決まります。それが、いかに訪問前に仮説を立てているか、ということなのです。

前回ご説明したように、我々は競合他社に先駆けて、お客様の潜在ニーズを掘り起こし、把握することで、営業活動を差別化することを狙います。お客様は顕在ニーズには気づいていても、潜在ニーズには気づいていない場合が多いです。そのとき、収集した情報から仮説を立てずに訪問したら、我々のお客様への最初の言葉はどうなりますでしょうか?仮説がないわけですから、お客様のニーズをお客様に尋ねるしかありません。「貴社ではどのようなお困りごとがありますか?」「貴社の課題は何でしょうか?」などです。ですが、そう尋ねられても、顕在ニーズは応えられたとしても、潜在ニーズはお客様自身にも応えようがありません。これでは、潜在ニーズは掘り起こされず、把握もできないわけです。

そこで、仮説を持ってお客様を訪問すれば、どのような言葉を最初に投げ掛けることになるでしょうか?例えば、「お客様のことをいろいろお調べしましたが、恐らく〇〇ということでお悩みではないですか?」「貴社の現状を踏まえますと、〇〇という課題をお持ちではないでしょうか?」などです。こうした質問を投げかけることで、お客様はYesかNoで応えることになるでしょう。Yesならば、「確かに、言われてみると〇〇は悩みの一つですね」「仰る通り、今まで意識してませんでしたが、〇〇は課題ですね」などという回答が返ってくるのではないでしょうか?仮説が外れたらどうするのか?と聞かれることがあります。外れたら外れたで構いません。もちろん、当たっているに越したことはないですが、限られた情報から、あまり時間を掛けずに推察するわけですから、外れている場合もあります。しかし、それならそれで次のような回答が想定されます。「いやいや、仰ることには悩んでませんよ。むしろ、うちが悩んでいるのは××です。」「いや、それは課題ではないが、××については取り組むべきと思っています。」など。

つまり、お客様に対して、こちらが仮説を持って、その仮説を投げ掛けることで、お客様が自身の潜在ニーズに気づくきっかけを与えることができるのです。これは、仮説を持たずに「どのような」「何が」といったオープンクエッションからは導き出されません。訪問前に少し時間を作って、お客様について今ある情報を整理し、それに基づいて仮説を立ててお客様にアプローチするだけで、お客様の潜在ニーズを掘り起こして、それを把握することができるのです。そんな簡単なことか、と思われるかも知れませんが、実際に営業担当者の皆さんに状況を伺うと、ほとんどの方が仮説を立てる時間を作らず、武器を持たずにただただ訪問を繰り返しているケースが多いのです。

次回は、仮説を立てる際の情報収集についてお話ししたいと思います。

次回のコラム; 仮説を立てるのに必要な情報収集 はこちら

前回のコラム; ソリューション営業のスキルが必要な理由 はこちら

著者 横山 仁久

上智大学文学部教育学科を卒業後、株式会社ベネッセコーポレーション九州支社にて高校営業を担当。上智大学総合人間科学研究科教育学専攻博士前期課程を修了した後、株式会社岩波書店に入社。書店営業として8年間在籍し、毎期のフェアで目標を達成。岩波書店創業百年では、同じく創立百年を迎えた上智大学との共催で記念シンポジウムを企画・運営。その後、十数年間の営業経験を活かし、首都大学東京社会科学研究科経営学専攻博士前期課程(MBA)を修了後には、経営コンサルタントに転職。コンサルティング会社2社を経て、独立。経営戦略、マーケティングの視点を取り入れたコンサルティング営業を専門として企業のコンサルテーション・研修育成に取り組んでいる。

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