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Netflixが導入したリスペクト・トレーニングとは?芸能界のハラスメント問題あれこれ

2022年4月に「パワハラ対策法」が全企業に適用され、ハラスメントに対する世間の目はどんどん厳しくなっています。ところが古い慣習が根強く残る業界もいまだ数多くあり、芸能界もその一つだとされています。

なかでも映画やドラマの撮影現場は、所属会社の異なるさまざまな人材が集まっている背景もあり、いわゆるブラックな労働環境・理不尽な上下関係の温床になりやすいといえるでしょう。

そんな中、Netflixで導入されている「リスペクト・トレーニング」を筆頭に、業界の慣例を変える取り組みに関心が寄せられています。

注目を集めるNetflixの取り組み

Netflixは自社オリジナルコンテンツの制作にあたり、下記の取り組みを行なっています。

  • リスペクト・トレーニングの実施
  • インティマシー・コーディネーターの導入
  • 相談用ホットラインの設置
  • 労働時間の規制(撮休日を設ける、撮影時間の制限をするなど)

とりわけ話題になっているのがリスペクト・トレーニングです。

リスペクト・トレーニングとは

ハラスメントを防止するための施策

リスペクト・トレーニングとは、職場でのハラスメント防止のための取り組みです。Netflixの制作現場では、監督やプロデューサー、役者をはじめ、撮影クルー、美術スタッフ、さらにはケータリングの業者に至るまで、関係者全員がこのトレーニングを受講するまで撮影をスタートすることができません。

トレーニングでは、セクハラ・パワハラといったハラスメントに対しての理解を深めると同時に、さまざまなケースに対して受講者が意見を交わします。

「撮影現場においてあだ名で呼ぶのはアリなのか、無しなのか」のような、はっきり「ハラスメント」だと断定しにくいケースを扱うため、受講者は考える機会が得られます。トレーニングと銘打たれている通り、「相手にリスペクトを持って接することができているか?」と自問し、考える力を養うのが目的です。

映像作品の撮影では、昔は怒号が飛んだり、時にはスタッフへ暴力が振るわれたりする現場もあったといいます。しかし、ハラスメントに対する意識が変化した現代に適応する労働環境を作らなければ、若者の業界離れは避けられません。また、日本には俳優の労働組合がないため、権利が守られづらい面があります。リスペクト・トレーニングの浸透によって声をあげにくい現状の改善が期待されます。

日本では2019年から導入

Netflixの本拠地であるアメリカではすでにリスペクト・トレーニングが浸透しつつありますが、日本ではまだまだ聞きなれない言葉。Netflixオリジナルの日本語作品では、2019年の『全裸監督』以降に撮影されたものはすべてリスペクト・トレーニングが実施されています。

良質なコンテンツで幅広い世代から注目を集めるNetflixの取り組みだからこそ、業界全体を巻き込み、今後より注目度は高まっていくでしょう。最近では、東映配給の『孤狼の血 LEVEL2』(2021年)や、NHKの大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(2022年)でリスペクト・トレーニングが導入され話題になりました。

ことの発端は#Me Too運動

アメリカで「リスペクト・トレーニング」が広がり始めた背景には、有名な「#Me Too運動」の影響があります。セクハラや性的暴行の被害をSNSなどを通じて明らかにするこの運動は、ハリウッドの有名映画プロデューサーから被害を受けた女性たちによる告発をきっかけに、2017年から急速に広まりはじめました。

「仕事だから」「有名になるためには仕方ない」と不当な状況を受け入れざるを得なかった人たちが声をあげたことが、ハリウッドに変化をもたらす起点になったのです。なお、この一連の運動のきっかけとなったのは、ニューヨーク・タイムズ紙​​による報道でした。2023年公開の映画作品『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』では、同紙のジャーナリストが関係者に取材をし、記事を世に発信するまでの流れが描かれています。

また日本でも、2022年に俳優による映画監督から受けた性被害の告発が相次ぎ、業界で常態化していた理不尽な関係性の強要にスポットがあてられました。

インティマシー・コーディネーター

演出側と演者のコミュニケーションをとりもち、撮影を成功に導く

アメリカでは、リスペクト・トレーニングが広まると同時に、演者を守るための施策の一環として「インティマシー・コーディネーター」を導入する現場が増えています。インティマシーコーディネーターとは、役者が肌を露出する場面やベッドシーンなどのセンシティブな撮影において、演出側との間に入って調整をするための専門家を指します。

事前に、演出側が意図するシーンの動きや撮られ方などの詳細をすり合わせた上で「これはOK」「これはNG」とラインを決めて契約を結びます。演者も制作側も、納得した上で撮影にのぞめるので非常に効率的なやり方なのです。

「台本にないキスシーンが急遽追加された」
「現場の空気に逆らえず、不本意な演技をしなければならなかった」
「センシティブなシーンの撮影に、必要以上の人数のスタッフが参加していた」

現場で起こるこれらの事態は、納得がいかないまま進めることで、役者にとって一生の心の傷になる可能性もあります。体当たりの演技を「役者魂」と褒め称える風潮がありますが、それによって生じる「不本意なシーンを拒否しづらくなる」という側面も無視できません。

演者へのリスペクトを持って撮影を進めるために、インティマシー・コーディネーターは必要不可欠な存在なのではないでしょうか。ハラスメントに対する目線が厳しくなりつつある現状で、任せられるプロがいるというのは制作側にとってもリスクヘッジとして機能するメリットがあります。

日本の映画・ドラマでも導入が活発に

ハリウッド映画やNetflixの海外コンテンツの撮影現場では一般的になりつつあり、日本ではNetflixオリジナルコンテンツの『彼女』(2021年)で、女優の水原希子さんの提案により初めて導入されました。

その後、BS-TBS制作のドラマ『サワコ 〜それは、果てなき復讐』(2022年)を皮切りに、関西テレビ放送制作の民放ドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』(2022年)やNHK制作のドラマ『大奥』(2023年)、東京テアトル配給の映画作品『エゴイスト』(2023年)など、Netflix制作以外でもインティマシー・コーディネーターが監修する作品が増えつつあります。

「そういう業界だから」ではもう済まされない

Netflixでは作品クオリティーの向上のために、撮影機材や設備だけでなく、制作にかかわる役者やスタッフの働きやすさにもどんどん投資しています。長年、特殊な業界と見られてきた芸能界でも働く人の尊厳を守るための動きが活発化してきました。どのような職場においてもコンプライアンスの順守は必須であり、もはや「うちはそういう業界だから」「この会社では古くからこうだから」では済まされないのが現状です。

セミナー&研修ネットでも「リスペクト・トレーニング」のような形態の研修が可能です。ただ知識を入れるだけでなく、ディスカッションなどのコミュニケーションを交えながら理解を深めていけるのが特徴です。異なる世代や立場の人材が集まる職場において、個々へのリスペクトを持って働くことの重要性を考える絶好の機会になるのは間違いありません。

セミナー&研修ネットのリスペクトコミニュケーション研修

一般的な映画関係者や芸能関係のような期間が決まっているプロジェクト型で行われることが多いリスペクトトレーニングですが、セミナー&研修ネットのリスペクトコミュニケーション研修では、長期間にわたり関係性を維持していく組織におけるコミュニケーションを踏まえたプログラムとなっています。

多くの企業では、短期的(有期限)プロジェクトベースでの関係性におけるリスペクトではなく、同じ職場で長年上司と部下、同僚といった関係性を積み上げてきているケースがほどんどです。そのため非常に狭いコミュニティの中で、どのようにリスペクトの意識をもっていただくか?という一般的な企業に必要となるポイントを踏まえて、講義、ケーススタディ、ワークを組み合わせて研修を実施いたします。

加えて、企業それぞれに固有の課題があるのが、ハラスメントとなります。すでに組織としてハラスメントが発生・定着しているのか?特定のスタッフがハラスメントを行っているのか?まだハラスメントそのものは起こっていないがその兆候が現れているかどうか?など企業によってどのようなプログラムにすべきか。は変わってきます。

また潜在的、水面下でハラスメントが進行している可能性もございます。ぜひとも企業特有の課題にあったリスペクト・コミュニケーションを考えることが重要ではないでしょうか。

ハラスメント防止の新たな実効対策「リスペクト・トレーニング研修」のカリキュラム

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