Netflixが導入したリスペクト・トレーニングとは?芸能界のハラスメント問題あれこれ


「パワハラ対策法」の全企業への適用を控えている現在。ハラスメントに対する世間の目はどんどん厳しくなっています。ところが古い慣習が根強く残る業界もいまだ数多くあり、芸能界もその一つです。

特に映画やドラマの撮影現場では、所属会社の異なるさまざまな人材が集まっていることもあり、いわゆるブラックな労働環境・理不尽な上下関係の温床になりやすいと言えるでしょう。

そんな中、業界の慣例を大きく変えようとするNetflixの取り組みに関心が寄せられています。

注目を集めるNetflixの取り組み

Netflixは自社オリジナルコンテンツの制作にあたり、下記の取り組みを行なっています。

  • リスペクト・トレーニングの実施
  • インティマシー・コーディネーター導入
  • 相談用ホットラインの設置
  • 労働時間の規制(撮休日を設ける、撮影時間の制限をするなど)

とりわけ話題になっているのが「リスペクト・トレーニング」です。

リスペクト・トレーニングとは

すべての関係者が対象

リスペクト・トレーニングとは、職場でのハラスメント防止のための取り組みです。Netflixの制作現場では、監督やプロデューサー、役者をはじめ、撮影クルー、美術スタッフ、さらにはケータリングの業者に至るまで、関係者全員がこのトレーニングを受講するまで撮影はスタートできません。

トレーニングでは、セクハラ・パワハラといったハラスメントに対しての理解を深めると同時に、さまざまなケースに対して受講者が意見を交わします。

「撮影現場においてあだ名で呼ぶのはアリなのか、無しなのか」のような、はっきり「ハラスメント」だと断定しにくいケースを扱うため、受講者は考える機会が得られます。トレーニングと銘打たれている通り、「相手にリスペクトを持って接することができているか?」と自問し、考える力を養うのが目的です。

映像作品の撮影では、昔は怒号が飛んだり、時にはスタッフへ暴力が振るわれたりする現場もあったといいます。しかし、ハラスメントに対する意識が変化した現代に適応する労働環境を作らなければ、若者の業界離れは避けられません。また、日本には俳優の労働組合がないため、権利が守られづらい側面があります。リスペクト・トレーニングの浸透によって声をあげにくい現状の改善が期待されます。

Netflixの本拠地であるアメリカではすでにリスペクト・トレーニングが浸透しつつありますが、日本ではまだまだ聞きなれない言葉。Netflixオリジナルの日本語作品では、2019年の『全裸監督』以降に撮影されたものはすべてリスペクト・トレーニングが実施されています。

良質なコンテンツで幅広い世代から注目を集めるNetflixの取り組みだからこそ、業界全体を巻き込み、今後より注目度は高まっていくでしょう。最近では、東映が配給する『孤狼の血 LEVEL2』(2021年公開予定)でもこのトレーニングが導入され話題になりました。

ことの発端は#Me Too運動

アメリカで「リスペクト・トレーニング」が広がり始めた背景には、有名な「#Me Too運動」の影響があります。セクハラや性的暴行の被害をSNSなどを通じて明らかにするこの運動は、ハリウッドの有名映画プロデューサーから被害を受けた女性たちによる告発をきっかけに、2017年から急速に広まりはじめました。

「仕事だから」「有名になるためには仕方ない」と不当な状況を受け入れざるを得なかった人たちが声をあげたことが、ハリウッドに変化をもたらす起点になったのです。

インティマシー・コーディネーター

アメリカでは、リスペクト・トレーニングが広まると同時に、演者を守るための施策の一環として、インティマシー・コーディネーターを導入する現場が増えています。インティマシーコーディネーターとは、役者が肌を露出する場面やベッドシーンなどのセンシティブな撮影において、演出側との間に入って調整をするための専門家を指します。

事前に、演出側が意図するシーンの動きや撮られ方などの詳細をすり合わせた上で「これはOK」「これはNG」とラインを決めて契約を結びます。演者も制作側も、納得した上で撮影にのぞめるので非常に効率的なやり方なのです。ハリウッド映画やNetflixの海外コンテンツの撮影現場では一般的になりつつありますが、日本ではNetflixオリジナルコンテンツの『彼女』(2021年)で、女優の水原希子さんの提案により初めて導入されました。

「台本にないキスシーンが急遽追加された」
「現場の空気に逆らえず、不本意な演技をしなければならなかった」

撮影現場で起こるこれらの事態は、納得がいかないまま進めることで、役者にとって一生の心の傷になる可能性もあります。体当たりの演技を「役者魂」と褒め称える風潮は決して悪ではありませんが、それによって生じる「不本意なシーンを拒否しづらくなる」という側面も無視できません。

演者へのリスペクトを持って撮影を進めるために、インティマシー・コーディネーターは必要不可欠な存在なのではないでしょうか。ハラスメントに対する目線が厳しくなりつつある現状で、任せられるプロがいるというのは制作側にとってもリスクヘッジとして機能するメリットがあります。

「そういう業界だから」ではもう済まされない

Netflixでは作品クオリティーの向上のために、撮影機材や設備だけでなく、制作にかかわる人たちの働きやすさにもどんどん投資しています。長年、特殊な業界と見られてきた芸能界でも働く人の尊厳を守るための動きが活発化してきました。どのような職場においてもコンプライアンスの順守は必須であり、もはや「うちはそういう業界だから」「この会社では古くからこうだから」では済まされないのが現状です。

セミナー&研修ネットでも「リスペクト・トレーニング」のような形態の研修が可能です。ただ知識を入れるだけでなく、ディスカッションなどのコミュニケーションを交えながら理解を深めていけるのが特徴です。異なる世代や立場の人材が集まる職場において、個々へのリスペクトを持って働くことの重要性を考える絶好の機会になるのは間違いありません。

著者 研修アドバイザー

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