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セクハラになる? ならない? よりも大事なこと

ハラスメント防止研修の講師をやっているとときどき、友人知人から質問がくることがある。今回は、講師の古くからの友人(60代はじめの男性、個人で仕事をしている)からのラインであった。本質的部分は残しつつ、個人や事情が特定されないように、若干のフェイクを織り交ぜてあることはご承知おき願いたい。

質問:昨日のオンライン会議の最中に、仕事で関係のある女性の方に「〇〇さん、髪型変えましたか?」とつい尋ねてしまったんです。「はい、実は……」と理由をお聞きしている最中にあることに気づき、一言追加しようと思っていた言葉を飲み込んで、次のようにお詫びした。「先ほどの僕の発言は『セクハラ』でしたね、ごめんなさい」「そんなことないですよ~」「いやいや、どうもすみません」で終りました。
では自分は何と言おうと思ったのかというと、「その髪型とってもお似合いです。素敵です」そう言おうと思っていた言葉を飲み込んだんです。「髪型変えましたか?」でもう、セクハラとしてアウトなのでしょうか?飲み込んだ言葉「お似合いです。素敵です」までいったらセクハラになるんでしょうか? OK、なんでしょうかね?



少し考えて、私は次のように回答した。

回答:もし、髪型が変わったことに気がついたとしても、今度からは「雰囲気変わりましたね?」という聞き方をしたほうがいいとおもいます。男性に対してもそうですが、特に女性とコミュニケーションを取りたいのなら、髪の毛を含めて容姿、身体、服装など、外観は主題にしないほうがいいです。ハラスメントって、犯罪レベル/違法行為レベルからモラルやマナーの問題まで幅が広いですよね。もちろん「髪型変えた?」が犯罪レベル/違法行為レベルになるかといえばそうではないでしょう。けれども、私たちの普通の生活では、ハラスメントになるとかならないとかのアプローチよりも、それはやめてもらうべき行為なのかどうか、控えるべき行為なのかどうかというアプローチで考えるべきだと思います。

ちなみに、男性もそうだけれども特に女性、髪の毛というのは性的な象徴でもあるようです。どうやら豊かに長い女性の髪の毛がゆらゆらと揺れる姿は、男性に性的なイメージを与えるという脳科学者の意見もあるようですよ。宗教の中では髪の毛は剃ってしまったり、隠したりするものもありますね。

その人が「ハラスメントじゃないですよ!」と言ってくださったのはラッキーだと思います。ただし、それが本心なのかどうか、それはわからないことです。本人にもわからない場合もあるんです。後から「思い出してみればあの時は嫌な気持ちだった、セクハラされた!」と記憶や感情が書き変わることもあるし。

普通ならここまででアドバイスを終えるところであるが、彼とは長い付き合いなので、もう一歩踏み込んでみました。

追加:「その髪型とってもお似合いです。素敵です」と、なぜ言いたいのか/言いたかったのか?をよーく、本当に深く、「なぜ?」を、その人に対する「敬意」があったのかも含めて、4-5回ぐらい重ねて考えてみると良いと思いました。〇〇ハラスメントに「なる/ならない」とまるバツで考えると、思考がそこで停止してしまうんだと思っています。ぼくは研修では「まるバツ問題」は出さないのです。考えてもらわないと。そして、いろんな人がいろんな意見があるんだなって、シニア男性にも、若い女性にも、知ってもらいたいと思っています。

・大丈夫、ぜんぜんOK でしょ?なんでこれがダメ?そんなの窮屈だ、という意見も出るだろうし、
・えー、こんなこと言われたらやだ〜、でも〇〇さんからだと、作り笑いをして「ありがとうございます♪」って言っちゃうんだろうな、これからも仕事を続けるんだから人間関係を崩したくないし、という意見も出そうです。

そう回答したところ、彼からは次のように返信ラインが来ました。

返信:そうですね。なぜ「その髪型とってもお似合いです。素敵です」と、なぜ言いたかったのか。「新しい髪型が新鮮に見えたから」→なぜ?「彼女を魅力的に感じたから」→なぜ「それまでも好感を持っていたし、髪型を変えたことに気がついたぼくを知ってもらいたかったから」→なぜ?「彼女にもぼくに興味、いや、好意を持ってもらいたかったからかも…」→なぜ?「うーん、敬意がなかったとは思いたくないけど、やっぱり、自分では気がつかない『下心』があったのかなあ〜!!!」

彼とのやりとりはここで終わった。「ワンチャンあるかも!」までの下心が明確にあったかどうか、心の奥深くまではわからないけれども、それを敏感に嗅ぎ取る女性(に限らずですが)いることも事実だと思います。

セクハラになるとかならないとか以前に、もちろんTPOや言い方、その時の表情、いろんなことを考える必要はありますが、職場や日常生活で、髪の毛を含めて容姿、身体、服装など、外観は話の主題にしないほうが、人間関係の維持継続のためにはいいでしょう。

以上です。

朽木鴻次郎講師プロフィール

朽木鴻次郎

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