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顧客満足:CSの向上にむけて(4) ~CS経営の実践手順(2)~

顧客満足:CSの向上にむけて(4) ~CS経営の実践手順(2)~

さて、本稿ではCS経営を支え続けるための、「CS経営の仕組み」について考えてみたい。

前稿でCS経営を実践する場合、まず、はじめにするべきことは、社員の“意識改革”であることを述べた。具体的にはトップのメッセージ発信から始まり、幹部社員・コア社員への啓蒙、そして最後に店舗スタッフ等への啓蒙という順序で進めることを述べた。

そして、これらの意識改革を第1ステップとして、いよいよCS経営を実践していくこととなる。以後のステップは、第2ステップが行動改革、第3ステップが商品・施設改革、第4ステップが仕組み改革、第5ステップが業務改革である。以下、これらを順を追って記す。

(1) 行動改革

行動改革は、主にソフト面の改革であり、顧客接点における接客方法の改善、コア社員による継続的な指導と評価、継続的な練習と改善などである。

顧客接点における接客方法の改善は、まさに、誰が、どのタイミングで、どのように、接客をするのかである。しかもこれは、顧客接点の一連の流れ(例えば、入店~挨拶~ファーストコンタクト~商品説明~レジ対応~お礼~お見送りなど)の中の全てを対象とする。勿論、トラブルなど異例な事態が発生した場合もカバーされていなければならない。

CS優良店である自動車販売会社の例を挙げると、まず顧客が駐車場に入ると、基本的には2人以上の店舗スタッフが車の止め位地まで走って出迎えに行く。(雨が降っている場合は大きな傘をもって出迎える。)そして、顧客が店内に入店すると、商談中以外のほぼ全ての店舗スタッフが笑顔で挨拶をする。その際、店舗スタッフはその時行なっている仕事の手を止め、顧客の方へ神経と顔を向ける。そして、顧客を商談席へ案内し、椅子をひき席をすすめる(この際、子どもを連れてきた顧客に対しては、移動式のベビーベットをさりげなく用意し勧める)。そして、用件を聞くとともに、飲み物のオーダーをとり一旦引き下がる。まもなく、用件の担当者が商談席にやってきて、爽やかに挨拶し、世間話を挟みながら商談に入る。商談では、傾聴中心に行ない顧客の要望を十分に聴いて、誠実に商品説明などの対応をしていく。販売価格や下取り価格の交渉では、特に神経を使う。これまでの取引年数やお買い上げ台数、関連顧客などの顧客情報を元に、精一杯の価格呈示をはじめから行なう(後から、価格が大きく動くことは、顧客からの不信感にもつながりかねない)。また、顧客間の不公平感をなくすためにも、値引き幅などは、できるだけ客観的な条件に基づいて決定される。顧客はその店舗で例えば2台も車を買うと、自分自身をかなりの優良顧客と思っている可能性が高く、その自分にそれなりの対応(価格呈示など)をしていないと分かった場合、不満足を感じ顧客離れにつながる恐れがあるからである。途中、商談が長引いた場合は、他の店舗スタッフが商談席にやってきて飲み物のおかわりを勧める。商談が終了すると、今日の来店のお礼を言い。玄関、そして駐車場まで見送る。この際、他の店舗スタッフもその時行なっている仕事の手を止め、顧客の方へ神経と顔を向け「ありがとうございました」と感謝の意を表する。接客にあたった担当者は、駐車場へ車の誘導に回り、道路の側まで行きお客様の車が道路に出るタイミングを計る。安全を確認し、お客様が出るタイミングがきたら手を回し道路に出るサインを送る。お客様が道路に出たら、笑顔でお辞儀をしてお見送りをする。そして、お客様の車が見えなくなるまでお見送りを続ける。この時、信号で止まった場合は、その場で立ち止まり、青信号に変わりお客様の車が見えなくなるまでお見送りを続ける(お客様は意外と見ているので最後まで気を抜かない)。一方、万一トラブルが発生した場合は、クレームを受けた担当者だけではなく、店舗長をはじめとして複数のメンバーで対応にあたる。傾聴を中心に、顧客の感情を冷静に受け止め、まずは信頼の回復に努める。その上で善処策を講じていく。

このように、一連の流れの中での各顧客接点において、誰が、どのタイミングで、どのような行動をするのかを前もって具体的にイメージし、役割分担を決める必要がある。この役割を担うのはコア社員(支店や店舗の統括マネージャー、マネージャー、店長など)である。このようなことを定めたものを一般的にはマニュアルというが、マニュアルだけではCS経営は実現できない。なぜなら、マニュアルの作者が予想した通りの行動をしてくれる顧客はそうはいないからである。あくまでお客様一人ひとり、一瞬一瞬の状況に応じた対応、これ以外にお客様にご満足いただける対応はないのである。CS経営で目指すべきレベルはマニュアルを超えるレベルである。

次いで、コア社員による継続的な指導と評価についてである。前述の顧客接点における接客方法を改善しそれを定着させる役割はコア社員が担う。そのためには、コア社員自らがお手本となるような行動をとらなければならない。

前述の自動車販売店は実際に存在するが、この会社では社長自らが朝早く来て、お店の近くの清掃をするとのことである。また、誠実な接客や、さりげない「おもてなし」や「気配り」は、先輩社員のやり方をみて、後輩は真似をしながら段々とできるようになるとのことである。

このように、指導とは、「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」という山本五十六の言葉が示す通り、コア社員自らが先頭に立ってやり、部下にやらせ、上手くいった場合には評価する(褒める)ことを指す。

しかも、これを継続的に行なわなければならない。継続してこそCS経営である。中途半端は許されない。継続するためには理念が必要である。だからこそ、経営者の経営理念に基づいた断固たる方針決定と、継続的なメッセージ発信が欠かせないのである。

最後に、継続的な練習と改善についてである。上述のように一連の流れの中での各顧客接点における接客方法の改善の取り組みは、一朝一夕には上手くいかない。事前練習と本番において、トライ&エラーを繰り返し、その店舗等にとって最も良いものに磨きをかけて行かなければならない。

例えば、笑顔一つも練習である。弊社にも笑顔のトレーニングを得意とする研修講師がいるが、「日頃から反復継続的に練習しないと本当に良い笑顔は作れない、笑顔にはお金がかかるんです」という。その他にも、敬語の使い方、お辞儀の仕方、ご案内の仕方、名刺の渡し方、身だしなみなどの基本接客マナーを理解し、顧客から喜ばれる(少なくとも不快感をもたれない)レベルにしなくてはならない。

これらは、常に練習(ロールプレイ)を繰り返す必要がある。これをしないと、いつの間にか、自己流が蔓延し、基本が疎かにされる恐れがあるからである。基本があっての応用である。

また、常に改善を忘れてはならない。何事もそうであるが、「今が、最善(ベスト)ではない」と考え、もっと良いサービスを探求し続けて行くべきである。まさに、PDS(Plan Do See)のサイクルを回し、常に改善していくからこそ、CS(顧客満足)のレベルを維持できると考えていただきたい。

(2) 商品・施設改革

商品・施設改革は、主にハード面の改革であり、品揃えや顧客接点における店舗施設の改善のことを指す。

これも前述の行動改革と同様に、顧客接点の一連の流れ(例えば、看板~駐車場~入り口(ドア)~エレベーター(エスカレーター)~レイアウト~店内案内表示(POP)~導線~品揃え~トイレ~休憩室~出口など)の中の全てを対象とする。

※なお、顧客接点の一連の流れは、企業ごと、店舗ごとに違うのでそれぞれ考えていただきたい。

品揃えは、顧客がお店を選ぶ際の重要な要素である。欲しいモノ(サービス)を見るため、買うため、その情報を知るため、顧客は店舗等へ足を運ぶのである。顧客のニーズや売れ筋商品の把握は重要である。この情報の格差が店舗間の格差を作りだしていると言っても過言ではない。一方、最近はインターネットやTVを活用し、実在庫をカバーするやり方も存在する。

また、以下の店舗施設の改善とも関連するが、お客様が欲しいモノ(サービス)を探し出せる仕組みも重要である。商品を見つけ出せなければ、ないのと同じだからである。一方、そのようなお客様を見かけた場合には、良いタイミングでお声がけをするようなことも店舗スタッフの心構えとして欲しい。

店舗施設の改善は、顧客の立場に立って一連の流れを一つ一つピックアップし分析する。こちら(店舗側)では気がつかないことでも、顧客は困っていることや不便を感じていることが必ずあるはずである。

例えば、

●看板の場合:車で時速40㎞で走ってきた場合に、店舗を容易に見つけることができるか?
木が茂って見えにくくなっていないか?汚れたり・割れたりしていないか?等
●入り口:ドアは汚れていないか?バリアフリーになっているか?自動ドアの危険性はないか?等

一方、店舗施設の改善は、資金がかかるものもあり、優先順位をつけるとともに実施計画を立て、すぐに実施するものと、次回の予算でするもの、ペンディングするものなどに区分し、計画的に実施しなければならない。

次回、実践手順(3)では、第4ステップ「仕組み改革」、第5ステップ「業務改革」について記す。