クレーム対応研修は対応テクニックだけでなく…


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クレーム対応の研修を担当しました。

対象は、看護師さんの団体です。

 

実は私、大学入試の際に、友人と一緒に看護学校を受験したことがあります。第一志望に合格したため、入学はしませんでしたが、印象に残っているのは、面接で「看護師は激務だから…」と強調されたことです。

 

今考えると、体力もないし、注射も怖い私は、とうてい向いていなかったですね。

 

 

クレーム=苦情ではない

そんな看護師さん、「激務」だけでなく、最近は患者や家族などからのクレーム対応に苦慮することが増えており、今回の研修には多くの方が参加してくださいました。

 

私は、これまでもクレームに関する研修講師は経験してきましたが、とくに医療関係で起こりやすいクレームの特徴などにも触れながら、対応のコツをお話しし、ロールプレイングに取り組んでもらいました。

 

クレームというと、「苦情」といった意味に受け取る人が多いのですが、本来の英語ではよい意味も含めた意見や指摘、要望という意味だそうです。

 

それを踏まえると、クレームは「処理する」(=不要なものを片付ける)のではなく、気づかなかった点がわかる「よい機会」として、前向きに対応するものだと受け止めることができますね。

 

その話をしたところ、アンケートに「クレームが苦情ではなく、要望だと考えると、気持ちが軽くなった」といった感想をいただきました。

 

また、クレームが起こったときに、まずするべきこと、してはいけないことなど、ケース別にお話したことで、「流れと具体的な対応がわかった」という声も数多くありました。

 

ロールプレイングの効果とは

一方、「内容は理解できたが、いざ対応するとなると難しいと思った」という意見があったのも事実です。もちろん、いつも同じように事が進むわけでもないので、「教科書通り」の対応では不十分だというのは否めません。

 

しかし、例えば防災訓練を普段からしていれば、災害が起こったときには可能な限りの対応ができるはず。それと同じで、きちんと流れを理解し、ロールプレイングなどを通じて訓練しておくことで、好ましい対応ができるようになるものだと思います。

 

それと、ロールプレイングの効果として見逃せないことがもう一つあります。それは、自分が「苦情を言う側」を演じることで、どんな言い方をされると感じがよいか、あるいは不快な気持になるかといった発見をすることができる点です。

 

皆さんにもお伝えしましたが、日頃から、お店などでも「気持ちよい対応だ」と感じれば、どこが違うのかをじっくり観察したり考えたりする癖をつけておくこと。そうすれば、自分自身の対応も磨き上げられます。

 

また、不快な対応も「人の振り見て我が振り直せ」という言葉のとおり、おおいに参考になるはずですね。

 

人の振り見て我が振り直せ

ちなみに先日、こんなことがありました。

 

宿泊先のホテルで、受付用紙に記入しようと、用紙の束から1枚剥がしたのです。すると係員が飛んで来て、それを取り上げ、無言でもう1枚剥がし、さらに2枚剥がして、それを私に手渡しました。

 

「2枚複写です」。

 

しまった!と思いながらも、それならそうと書いておけばよいのにという気持ちがふつふつと。「用紙に記入して受付に渡してください」とあるだけで、2枚複写なんてどこにも書いていませんし、紙の色も厚さもほとんど違いがありません。

 

しかも、その人は… 分離してしまった2枚をその場でクシャクシャと丸めたのです。目の前で丸められては、「申し訳ない」を通り越して、気分が悪いですよね。

 

これこそクレームものですが、私は直後の研修ネタにするとともに、このコラムでも使わせたもらいました(笑)

 

こんなこともありました。

 

うどん店で食事し、支払いを済ませると、「ご自由に」と書いた天かすが目に入りました。「これ、いただきますね」と声を掛けたところ、何と…

 

「ひとつでお願いします」

 

はなから2つ取るつもりもないし、「お一人ひとつで」と書いてあります。仮に2つ取ろうとする人がいたら初めてそう言えばいいのに…

 

美味しかったのに、ホント、「要らぬひとこと」でした。もう行くことはありません。

 

どちらのケースも悪気があったわけではなく、無意識だったのでしょう。でも、ちょっとした態度や言葉で、印象がガラリと変わります。私も気をつけたいと思います。

 

この研修を機会に

どんな職場でも、クレームをゼロにすることはできません。しかし、日頃からわかりやすい説明を心がけ、丁寧な態度をとるようにすれば、クレームをぐんと減らすことができるはず。また、そんな気持ちが伝われば、信頼関係につながり、多少の不具合があっても、おおらかな対応をしてもらえるという好循環も起こります。

 

今回の研修は、ほぼ全員が「よくわかった」「役立つ内容だった」と評価くださいました。

 

クレームをおそれずに、だれもが生き生きと、気持ちよく働ける職場に。

 

単にクレーム対応のテクニックを学ぶのではなく、いろいろな事例をお話しすることで、気づきがあったり、考えるきっかけになったりしたのではないでしょうか。

著者 松山陽子

大阪市立大学生活科学部住居学科卒業後、まちづくりコンサルタント会社に勤務。商店街の活性化などに携わる。その後、会計事務所、飲食チェーン本部経理を経て、講師業・コンサル業として独立。
元力士である夫が店を始めて大苦戦する中で、「魅力を伝える」ことの大切さに気づき、POP、チラシ、販促ハガキ等を工夫してV字回復を遂げる。
現在は、その経験を生かし、集客をテーマにした講演に力を入れている。
一方で、CFP(日本ファイナンシャルプランナー協会認定上級資格)として、税金・社会保険・相続等の講演も展開。さらには趣味と実益を兼ねて、クロスワード作家、相撲研究家としても活動しており、こうした雑学やユーモアを盛り込みながらのセミナーは、「楽しかった」「時間があっという間だった」と各所から好評を得ている。

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