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経営的に打撃が大きいパワー・ハラスメント

パワー・ハラスメント(以下、「パワハラ」という)は、従来「上司の部下に対する指導」という名目で表面化することは極めて稀でした。しかし、最近はマスコミ等にも取り上げられことから、クローズアップされ、問題となっています。

家庭内暴力がドメスティックバイオレンスとして犯罪であると認識されることに合わせ、パワハラも会社内暴力として犯罪化して認識される方向にあります。そのため、刑事罰や民事における損害賠償等で会社や加害者にも大きなな責任や甚大な負担が及ぶことが少なくありません。

また、パワハラ事件はマスコミの好事となり会社のイメージ・信用力を大きく損なってしまうのと同時に、場合によっては取引先を失うなど、大きな経営的打撃となる恐れもあります。

パワハラも含むコンプライアンスの問題に蓋をすることは難しい時代

パワハラは、一般的に役職などが上層の者が下層の者に対して、あるいは正規雇用者(正社員)が非正規雇用者(アルバイト・パート社員等)に対して、その地位と職権を利用して嫌がらせやいじめをすることと考えられています。

しかし、パワハラ問題を難しいものにしているのは、例えば、上司は指示・命令・指導の一環と考えていても、部下が暴力だと感じてしまえば、それはパワハラ問題に進展してしまうということです。

法律で明確な定義がなく、厳格な業務指導と社内暴力の線引きが曖昧な中で、パワハラという言葉が一般化しており、ちょっとしたことでもパワハラ騒動が起きているというのが現状です。

しかも、高度に情報化・IT化しつつある現在では、誰もがネットを通じて簡単に社会全体に訴えられる状況にあります。

要するにパワハラも含むコンプライアンスの問題に蓋をすることは難しい時代なのです。

自らと会社を守るためにもパワハラ問題には早期にかつ真摯に取組む必要があります。

パワハラ問題の主因は「いじめ的な心理」だけではない

パワハラもセクハラも受け手の認識により異なります。同じ言葉が激励ととられ、かたやハラスメントととられる事はままあることです。こうした事態がハラスメントの問題を難しいものにしています。

多くの場合、「今時の若い奴らは、いったいぜんたい、何を考えているんだ?」といったように部下の側に問題があると考える上司は少なくありません。しかし、これではパワハラ問題は全く解決しません。

部下のせいにして、より高圧的になる、場合によっては無視するといった態度に出れば部下はより硬化し、離れようとします。

それを無理に追い詰めればパワハラとして表立ってしまう可能性は否定できません。こうなってはおしまいです。

パワハラ問題の主因は「いじめ的な心理」だけではありません。その多くは会社の業務目標を達成するための部下への督励であり、リーダーシップの発揮の中で起きています。上司の責任として部下の力を存分に発揮させ、会社業績を上げようとするあまりに、それが行き過ぎてパワハラととられてしまうケースが少なくないのです。

適切な督励と強いリーダーシップの発揮は企業業績向上には不可欠

しかし、全社を挙げて頑張りが必要な今、適切な督励と強いリーダーシップの発揮は企業業績向上には不可欠のことです。要するに業績を上げるためには強いリーダーシップと督励が不可欠だ。しかし、それをやればパワハラの恐れが強い。矛盾した話です。大変に難しい問題です。

パワハラ対策の研修は効果をあげていない?

今、パワハラ対策としてのコミュニケーションやコーチングに関する研修の多くが実効を生んでいないのが現実です。何故でしょうか?多くの場合、パワハラ対策をコミュニケーションやコーチングなどをスキル面でしか捉えていません。しかし、考えても見て下さい。同じ言葉が、「元気づけと取られたり、優しい気遣いと取られる」場合もある一方で「いじめや嫌がらせ」になってしまう事もあります。この場合、言葉を選ぶとか言い方を変えるといったスキル的な対応だけで解決がつくでしょうか。否です。

例えば、好感を持ち信頼している上司から「オイ、この成績は何だ、もっとしっかりしろ」と怒鳴れても「ハイ」と素直に聞き、頑張ろうと思う筈です。しかし、逆に嫌悪を感じ信頼の無い上司から同じ事をいわれたら、どうでしょう。大半の人は反発するか、無視を決め込むことになります。

効果が上がるのは二段階方式の研修

「パワーハラスメントの防止を含むコーチングスキルアップ研修」において実効性上げ、効果の継続性をはかるには、上司として部下の好感と信頼を勝ち取るための心構えの在り様を中心にした考え方の研修と、具体的なコーチング等のコミュニケーションのスキルアップ研修の二段階方式で行うのが効果的です。

例えば研修では、以下のようにプログラムすると良いでしょう。

■事例紹介

実際にパワハラにより部下を自殺に追い込んでしまい、社会問題となり、結果的に本人(加害当事者である上司)は退職に追い込まれ、挙句は高額の慰謝料を抱え、家族は離散してしまったというケースがある。当人はやや頑な厳格さはあったものの真面目で普通の人柄だったといいます。こうした、ネガテイブで具体的な事例や判例を紹介することで、パワハラ問題の持つ深刻さを理解させ、真剣な取り組みを促します。

■上司の心構え

部下を思いのままに仕事をさせたいと思うのなら、「上司は部下のためにある」と考えるべきです。
部下指導が駄目と言われる上司の多くは「部下は上司のためにある」と思い込んでいます。ですから、業務が上手くいかないのは、指示を聞かない部下のせいということになり、その挙句に部下を追い詰めてしまい、「窮鼠猫を咬む」といった形でパワハラの表面化に至ってしまうのです。
一方、「上司は部下のためにある」との思いと姿勢での厳しい指導と督励はそれ自体が部下の意欲をかき立てます。部下を思う様に使いたいとすれば「上司は部下のためにある」と考え行動することです。

■清水次郎長の言葉に見る上司の本質

ここで、一つの例を出します。幕末から明治にかけての維持の主役の一人である山岡鉄舟は明治維新後に、静岡藩の藩政補翼となり、土地の任侠清水次郎長と意気投合したといいます。あるとき、鉄舟が次郎長に「お前は沢山の子分を持っているが、所詮はやくざ者、果たしてお前のために命を捨てるという子分は何人いる」と問いかけました。すると次郎長は「さあ、何人いますか。一人もいないかも知れません。しかし、私はどの子分のために即座に命を捨てるつもりです」と答えたと言います。それを聞いた鉄舟はいたく感服し、次郎長の死後に「壮士之墓」を揮毫して与えました。

■上司は自分の顔と服装と態度に責任を持て

部下の顔は自らの顔の反映である。上司は自分の顔と服装と態度に責任を持つ必要があります。部下は上司を見ています。そして上司の顔と態度にシビアに反応します。朝一番から上司の貴方が「苦虫を噛み潰したような顔で睨みつければ」部下の多くは暗く萎縮し所作は緩慢になり仕事能率は著しく下がります。最上の顔のつくり方を考えましょう。

■イソップ童話の太陽と北風の話しからパワハラを考える

イソップ童話の太陽と北風で、旅人をして思い通りにできたのはどちらでしょう?
パワハラ的アプローチの効率の悪さに気づいて下さい。

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