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感情労働とストレスケア

労働には肉体を使う「肉体労働」、頭脳を使う「頭脳労働」、感情を使う「感情労働」があります。感情を使う仕事というと飲食業などのサービス業、営業、介護や看護といった「人」を相手にする仕事のことです。「感情労働」は、職務上、感情が重要な要素であり、あるべき感情が規定されている職業のことです。

 

感情労働者のストレス

感情労働者は感情管理ができていて、自分の感情をコントロールができて、常に優しく感情的にならないでいることが求められます。カウンセラーの私自身もプライベートの場でもその「顔」を求められ、常に気が抜けないプレッシャーを感じています。そのため感情労働者はストレスが高まり、心が疲れやすくなり、その使命感でがんばり過ぎて自分のストレスに気づかずメンタル不調なってしまうことが多いです。

介護施設の事例発表会で「私たちは天使じゃない」と入居者との関わり方について彼らの悩みを聴いたことがあります。人をケアする善意の仕事でも、時には相手に腹が立つこともあります、仕事の効率を上げるためには、相手の気持ちまで配慮していられないときもあります。プライベートで問題をかかえていれば、なおさらストレスが高まります。そんな時、クレーマーやモンスターペイシェントと呼ばれるような人たちに「優しく」「思いやりをもって」ケアしなければならない介護職の人たちはつらい思いを我慢しているのです。「ケアする人がケアされなければならない状況」が、いたるところで生じているのです。福祉に携わる心の優しい人達が疲弊しています。

 

カスタマーハラスメント

厚生労働省は顧客からの悪質クレームが「無視できない状況にあり、社会全体にとって重要な問題」、「カスタマー(顧客)ハラスメント」と名前を付けて周知・啓発を行うことを提案した上で、「関係省庁が連係して行っていくことが重要」とパワーハラスメント防止のための有識者検討会の報告書案に明記しました。これは「カスタマーハラスメント」など、迷惑行為に対して特定の名前やその内容を浸透させることが有効ではないか、私たち自身が「カスハラ」を知り、知名度を上げることから始めることが必要だといっています。効果や即効性については疑問視されていますが、感情労働している人は顧客自身に「カスハラ」を知ってもらうことで防止できるのではないかと期待度が高まっています。

 

感情労働で働く人の心の問題はなぜ早くみつからないのか?

心の病気は対応がとかく後手にまわるケースが多く、「なぜ、もっと早く分からなかったのか」といった職場における適切な対応の遅れが原因となり悪化してしまいます。大切なことは、病気になってから対応するのではなく、まず、「心の病気を予防する」ことです。分かっていても感情労働の人達は相手を配慮するあまり、自分のことが後回しになり、我慢してしまうことが多く、気づいた時には症状が悪化して休職しなければならない状態になっています。発生してからの対処療法でなく予防するためには、現場の抱える課題、組織の根本的なストレスを明確にし、働きやすい職場環境を改善すると同時に、働く人の心の病気を予防するための「メンタルヘルス支援」施策を組織全体で具体的に実施することが必要です。

 

ストレスケアの方法

ストレスは早めに対応

悪玉ストレスの上手な発散方法はストレス対処法を沢山持つことです。ストレスコーピングはその一つで、自分がイラッとしたらそこから離れること、ストレッサーへの視点を変えるという対処法があります。また運動、カラオケ、趣味、旅行などの「気ばらし型」、マッサージやヨガなどの「リラクセーション型」、誰かに話す「情動表出型」もあります。「今日は疲れた、帰ったら大好きなビールを飲もう!」と思うだけでもストレスコーピングになります。感情労働で働く人は、「オンとオフを切り替える」「自分の時間を持つ(大切にする)」ことも大切にしてください。

 

レジリエンスを高める

ストレスは無くならないので、逆境の時でも折れない心をつくる、レジリエンス高めることも必要です。自尊感情・自己効力感を持っているか、楽観的な見方ができているか、感情のバランスが取れているか、自ら考える力を持っているか、良好な人間関係を築き、必要な助けを借りたり、助けたりできているか、など日頃からチェックしましょう。

感情労働で働く人のセルフケアのためには、自らのストレス・マネジメントや心の病気の基礎知識などが必要です。心身ともに健康でイキイキ前向きに元気に働き続けること、我慢しないでいつもと違う自分に気づいたら早めに対処することを心がけましょう。