メンター制度を機能させるために


メンター研修を行っている。“行っている”と書いたのは、3回シリーズで現在も継続中であるからだ。ちょうど2回目が終了したところだ。

新入社員などに対し、相談に応じ、適宜アドバイスする役目を担う人をメンターと称し、アドバイスを受ける側の人をメンティと称する。このメンターに向けての研修を3回にわたって行うことが、今回の僕の役目となっている。

僕の新入社員の頃を振り返ってみれば、メンター制度などの手厚い加護(?)を、当時入社した会社から受けた覚えはない。このようなメンター制度が、現在の企業にどれほど浸透しているのか調査があったので紹介する。メンター制度を導入している企業の割合は51%ということだった。(HR総研 人事白書より)

このようにメンター制度が近年とみに普及しだした背景は、特に優秀な人材確保が難しくなった、人材は皆で育てるという風潮が当たり前になった、人材育成には時間とコストがかかることが認識されるようになったなどが考えられる。確かに、かつてのように新入社員を大量採用し、優秀な人材は自然淘汰されるなかで得られるというかつての人材育成モデルは崩壊したのかもしれない。

そうであっても、人事部門が考えるメンター制度がうまく機能しているかどうかは、はなはだ疑問がある。その第一の理由は、メンター側としての準備がなくて、いきなりメンターに指名されて、どのように対応すれば良いのか分からないまま、自分の経験や思い込みのみでメンティの問いかけに答えていることだろう。特に、メンター側のコミュニケーション力の問題がありそうだ。通常業務で必要とされるコミュニケーション力と、メンターとして求められるコミュニケーション力とは明らかに異なる。通常業務で必要なコミュニケーション力とは、第一に相手と交渉する力だろう。一方でメンターに求められるコミュニケーション力は、相手の考えていること、言えないでいることを引き出す力だ。すなわち前者で必要なのは引き出す力、後者では押し出す力、表現力となろうか。

第二の理由は、メンター制度を支える仕組みの未整備だろう。メンターに指名されたが、具体的なメンターとメンティを結びつける仕組みがなければ、制度は機能しないのは明らかだ。例えば、業務時間を割いてメンターとメンティが話し合う機会の仕組み、話し合う枠組みのスケジュール設定などを、制度を創設した人事部門などが用意すべきと思う。

第3には、中堅社員でもあるメンターの業務の多忙さが、メンター制度を機能させる障害となる場合が多い。

僕が今回メンター研修を任せてもらっている会社では、第3の理由を除けば、幸いにも上記の理由を排除することが試みられているようだ。とにかく、第1回目のメンター研修では、メンティの思い、悩み、日常の戸惑いなどを十分に引き出すためにどのような言動が必要なのか力説したつもりだ。

著者 西村伸郎

大阪大学大学院 修了。
富士ゼロックス株式会社の研究所に勤務し、記憶装置などの研究業務に従事する。その後、研究企画・管理部門を経て、設計開発、製品リサイクルなどを統括する立場で経験を積む。
平成16年、富士ゼロックス株式会社を円満退社後、経営コンサルタントとして活動開始。
現在は、中小企業を中心に経営コンサルタント・社長参謀として活動する傍ら、企業研修や公的機関のセミナー講師を務める。人事評価システム、従業員満足度測定システム構築等で多くの実績を重ねる一方で、商店街活性化事業にも取り組むなど、幅広く活躍中。

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