顧客満足:CSの向上にむけて(2) ~満足と不満足~


顧客満足:CS(Customer Satisfaction)の向上にむけて(2) ~満足と不満足~

前回のコラムでは、顧客満足(CS)を高め、リピート(固定客化)や口コミによる新規顧客獲得を狙う手法は、企業にとってコスト・パフォーマンスが良い手法であることを述べた。そして、顧客満足を高めるためには、顧客は何に満足をするのか(要素、基準、レベルなど)を、“顧客の立場で考える”ことが重要であることも述べた。

今回のコラムでは、顧客満足(CS)とリピートや口コミの関係について整理してみたい。

(1) 満足と不満足

そもそも顧客満足とは、どのようなものであろうか。

顧客が満足するか、不満足を感じるかは、顧客の期待と実際との比較で決まる。顧客は無意識あるいは有意識にかかわらず、店舗、商品、サービス、接客などにある期待を抱いている。そして、顧客は実際の商品やサービスが期待と同程度であった場合は満足する。一方、実際の商品・サービスが期待を下回った場合は不満足を感じる。さらに言えば、実際の商品・サービスが期待をはるかに上回って良かった場合(例えば、ここまでするか!と驚かされた場合など)は感動をする。

●期待は顧客により違う

そして、この顧客の期待は、顧客によって全く違うし、同じ顧客でもその時の気分や状況によっても違ってくる。この“期待”とは、お店や施設側ではなく、顧客が抱くものでありそこに難しさがある。だからこそ、前回にも述べた“顧客の立場で考える”ことが重要となる。

●不満足は一瞬で決まる

また、不満足は一瞬で決まると言うことを覚えておいていただきたい。例えば、顧客は、サービス・スタッフ等の一瞬の表情を見逃さない。この場合のスタッフとはその施設や店舗等で働いている全てのスタッフのことを指す。

ある有名なリゾート施設でこんなことがあった。車でその施設に到着すると、ファースト・コンタクトは駐車場担当の警備員であった。そしてやや仏頂面で、「宿泊か、それとも日帰りか」を聞いてきた。「宿泊」と告げると、宿泊者用の駐車スペースを指さしそこに止めるように指示をした。その一瞬の接客には、いわゆる顧客を歓迎する気持ちはあまりないと私は感じた(お客の立場になると、自分が歓迎や重視されたい気持ちになる)。そして、そのリゾート施設の玄関に行くと、ホテルのドアマンが歓迎して出迎えてくれ、通常のホテルと同様のなおもてなしを受けた。しかし、顧客である私は、駐車場の警備員の一瞬の対応(表情や言葉のイントネーションなど)からこのリゾート施設ではスタッフに対する社員教育が行き届いていないとの印象を強く持った。勿論、それ以来、そのリゾート施設にはリピートはしていないし、口コミで「あそこは良いよ」とも言っていない。

上述の警備員の例は、まだあからさまなケースであるが、顧客はスタッフ等のほんの一瞬の“嫌な顔”や“困った顔”をも見逃さないと思った方がよい(厳しい顧客もいる)。

ホテルであれば、ドアマン、フロントスタッフ、レストランスタッフ、コンシェルジェなど多くのスタッフが頑張って顧客のおもてなしをしても、たった一人の一瞬の(顧客にとって)不快な態度や言葉使いが全てを台無しにする可能性もある。

この一瞬を大切にすることを意味する言葉として「MOT」(The Moment Of Truthの略)がある。これは、決定的に状況が変化する瞬間のことをさす。スペイン語では、闘牛士が牛にとどめを刺す瞬間をいう。

特に、値段が高い商品の販売店や、高級店、前評判が高い店や施設などの場合は、顧客の期待感が高いため、ちょっとしたことで全てがダメにされる可能性が高いので注意を要する。長年の信用や信頼関係も一瞬で壊れることさえある。

しかし、全てのお店・施設が一つの失敗や不満足で顧客からNGを受けるわけでもない。多少悪いところがあっても、総合点でプラス評価を獲得すれば、総じて満足ということも勿論ある。例えば、あるコンビニでは、アルバイトの店員の接客が少々悪くそれに不満足感を感じても、家から近いし夜遅い時間でも空いているので便利だから、リピートするということは普通にある。

(2) 満足、不満足とリピート、口コミとの関係

では次に顧客の満足、不満足とリピート、口コミとの関係についてみていこう。顧客が期待する以上の商品・サービスを提供し顧客が満足をすれば、必ず顧客はリピートや口コミをしてくれると言えば、残念ながら単純にはいかない。商品・サービスの特性、顧客の性向・性格、店舗等への距離、競合店の状況、その他によって全く状況は変わってくる。その辺りを整理してみたい。

例えば、商品が結婚指輪やお墓の場合はどうだろうか。おそらく、誰しも一生に何度も買わない商品であろう。この様な商品特性の場合は、リピートを期待することはほとんど難しい。しかし、口コミの可能性はあるので、顧客満足が重要であることには変わりない。

他の例を挙げると、顧客の性向や性格によっても、リピートの有無は大きく変わる。観光地のホテルや旅館などが良い例である。慣れた宿でゆったりとくつろぐことが好きな方は、満足したホテルや旅館に何度でもリピートするだろう。一方、色々な場所(ホテルや旅館も含めて)へ行きたいという方は、いくら満足しても同じホテルや旅館に行くことは少ないかもしれない。

この様に、顧客がリピート(または口コミ)するかどうかは、商品・サービスの特性、顧客の性向・性格、店舗等への距離、競合店の状況、その他の条件が複合的に絡み合って決まる。以下に、顧客が商品・サービス等に満足以上の評価をした場合、それぞれの条件の中でリピートや口コミの可能性についてまとめた。これは私の私見であるので読者諸兄もご自身で考えてみて欲しい。

 例示 リピートの可能性口コミの可能性
商品特性一生に何度も買わない商品・サービス
(※墓、結婚指輪、住宅、etc)
どこで買っても同じ商品(品質・価格など)
スイッチングコストが高い場合(下記※1)
(例:プリンターのインク、メーカーから見た場合)
顧客の性向色々な商品・サービスを試したい
一度はまると、飽きるまで徹底的に~する性格
義理人情に厚い性格(例:一度話しをすると裏切れない性格)
立地距離的に近い(インターネットも含む)
※高級品の場合ほど範囲は広い
距離が遠い

(可能性のレベル)
◎:高い  ○:可能性はある  △:可能性は低い  ▲:可能性はかなり低い  ×:可能性はほぼない

実際には、これらの条件等が複合的に評価されて、リピート、口コミが決定される。

※1 スイッチングコストは、現在利用している商品・サービスから別の商品・サービス等に切り替える際に負担しなければならないコストのことをといい、これは金銭的負担、心理的負担、手間暇負担など様々な負担するコストが組み合わさっている。

一方で、先ほどのコンビニの例でも分かるように不満足でもリピートすることもある。例えば、それ以外の選択肢がない(少ない)場合、また、日常品などの場合は立地や利便性を重視する傾向がある。

つまり、リピートしてくれているからと言って、顧客は満足しているとは限らず安心はできないのだ。このような顧客は外部の環境が変化(競合店の近隣への出店など)すれば、いつ来なくなるのかわからない。

●CS(顧客満足)向上は絶え間ない努力から生まれる

ここでは、顧客の満足、不満足とリピート、口コミとの関係についてみてきたが、顧客に満足していただいたとしても簡単にはリピートや口コミにつながらないこともあることをご理解いただけたと思う。

しかし、お店や施設側からすれば、お客様に喜んでいただくにはどうすれば良いのかをひたすら努力し続けるしかないのである。ファンを増やし、今日来たお客様に明日(来週)も来ていただく経営がCS経営の本質である。その継続的な努力の先に、CS(顧客満足)の向上があり、結果としてリピートや口コミがあるのである。

最後に、必ず貴方の店・施設へ行く(ほとんど行く)、必ず貴方の商品を買う(ほとんど買う)が、ファンであり、たまたま行く(買う)レベルではファンではない。ファン作りこそCS経営である。