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導入が進む人事アセスメント その1

戦後、アメリカの企業で導入が始まった人材アセスメントは、日本においても研修や選抜試験という形で企業や組織に導入が進んでいます。

特に、バブル崩壊後には、その導入が急速に進んでいると言われています。これは経済混乱の中で、企業が生き残りや成長をかけ、人材の絞り込みや、より有効な人材活用を行う手段・手法として注目度が高まり、人材アセスメントを取り入れる企業が増えていったものと考えられます。

本稿では、人材アセスメントという手法が、何故、日本企業に導入が進んでいるのかを、掘り下げてみたいと思います。

1.人事評価に対する信頼性の問題

(1)企業の人事評価の現状と問題点

現在、日本においては、能力主義に基づいた能力評価や、成果主義に基づく成果評価、実力主義に基づくコンピテンシーや行動評価、目標管理による達成度評価など、様々な手法と基準により企業や組織の人材が評価されています。

当然、それと連動する形で、人材配置、昇進・昇格や、賃金や賞与への反映という処遇がなされています。

しかし、いずれの評価にもメリット、デメリットがあり、評価を受ける側(以後、「被評価者」という)にとっては、納得のいくものとならない場合が多く、この部下の納得感というのが一つ目の問題と言えます。

ある程度、営業成績など客観的な数字で評価できる場合はまだ良いのですが、被評価者の能力や行動特性という目に見えにくいものを評価することは非常に難しいのです。まして、被評価者に納得させるとなると益々困難になります。

勿論、人事評価に熱心な企業では、定期的に人事考課者(人事評価をする人)の研修など、管理職、特に新任管理職に人事評価のトレーニングをさせ、評価目線の統一やスキルを学ぶことで、人事評価制度の公平性を担保する取り組みを実施しています。

しかし、人(部下)はそれぞれ全く違うので、短期間(1~2日程度)の研修で本当に正確に人材の評価ができるかというと、「やらないよりはマシ」というレベルだと考えられます。

また、特に、バブル崩壊後は人員の合理化がなされたことにより、多くの企業においてプレイング・マネージャーが増加しました。こうなると、普段、部下の仕事の様子をほとんど見ることができない管理職も多くなりました。このことが、管理職が部下の行動を細かく観察し、正確に評価することをより一層難しいものにしています。

最近、筆者があるビジネスパーソンから聞いた話を以下に紹介します。

「この前、上司から評価のフィードバックらしきモノがあったんです」

「その上司から、『今回はうちの課は全員“中の上”の評価だから』と言われた」と言っていました。

もう少し話しをよく聞いてみると、同じ課で働く人の中でも、土・日出勤や残業などをたくさんしている等すごく頑張っている人もいれば、そうでない人(休みがちで、早退や遅刻が多い)もいるそうです。

これは、名だたる大組織の最近の実話です。

勿論、これはあまりにもひどい例ですが、「上司の評価は信じられない」、「人事評価なんて、好き嫌いだよ」などの声は、良く聞く話です。

同じようなことが日本の会社や組織のありとあらゆる所で起きており、現在の人事評価制度に対する社員からの信頼性を落としているのではないかと推察されます。

また、このことを組織の経営者や管理者達も実は知っていて、人事考課だけを信用して、人材の評価、特に管理職の任用や抜擢をすることは危険だと、薄々気がついているのではないでしょうか。

ある意味組織の指揮命令系統を維持するためには、上司が部下を評価する形は理想ではあるが、本音ベースでは、そもそも管理職(上司)に、部下の評価をさせることにムリがあり、人事考課だけを信用しきれないと考えている可能性があると思われます。

この経営者等からの不信感が2つ目の問題です。

つまり、評価される社員からも、人材を活用する経営層からも信頼性が疑われているのが、残念ながら今の人事評価制度なのです。

(2)第三者による評価の納得性

管理職(上司)による評価は、好き嫌いも入ります。この好き嫌いには、人間自体の好き嫌いだけではなく、自分の好きな行動、同じような行動をするタイプの部下を良く評価する。反対の場合は、悪く評価するという場合も含まれます。

極端な場合ですと、部下は、自分のことを好きでない上司の部下でいるうちは、ほとんど日の目を見ることができない可能性さえあります。

あるいは自信のない管理職(上司)は、前掲の上司のように「今回はうちの課は全員“中”の評価だ」と言うかもしれません。(中心化傾向)これでは、本当に何のための人事評価なのか、分からなくなってしまいます。

こうした中、外部の第三者である専門家(特別のトレーニングを受けたアセッサー)が評価する人材アセスメントは、経営者からも人材評価の一定の判断材料として信頼性が高く、一方、評価を受ける社員からも、第三者ということでより納得性が高まる可能性があるのです。

(勿論、正確な評価をされる管理職の方もいらっしゃいます。)

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