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職場のパワハラ(職場のいじめ・嫌がらせなど)の問題が増加しています

環境が変わりパワハラが増加

経済環境、社会環境、労働市場環境などの急激な変化や、働く人の意識、職場における役割、責任、評価基準の変化などと相まって、近年、職場におけるパワー・ハラスメントの問題が増加傾向にあります。(労働局等の労働相談件数、訴訟件数等)

具体的には、暴行や暴言は論外として、仕事を与えない、別室に隔離し孤独にする、長時間におよぶ説教、嫌がらせのための配置転換や席の配置替え、見せしめを兼ねた懲罰的目的での教育訓練や指導監督、人格や名誉を過度に傷つける言動など。これらの言動や仕打ちを部下が上司などから受けた場合に、また会社がこれらを放置した場合に問題となります。その結果としてうつ病等の精神疾患になった、あるいは名誉や人格がひどく傷つけられたなどとして、労働者が労働基準監督署や労働局への相談することや、裁判所へ提訴すること等が増加しています。さらには、うつ病等の精神疾患に留まらず自殺という最悪の結果に至り、遺族等が「自殺の原因は上司のパワー・ハラスメントだ」として訴えるケースもあります。(神奈川県警、川崎市水道局等)

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高まるリスク

勿論、前述したような言動や仕打ちは今になって始まった訳ではありません。企業や組織にとって問題なのは、以前であれば潜在化していたことが、今は顕在化し始めていることです。

例えば、企業や組織が本来とるべき安全配慮義務などの義務を履行しなかったとして、裁判で債務不履行責任(民法415条)を問われることがあります。この様な判決が出れば、企業イメージは大きな打撃を受けることになります。また、高額の慰謝料を請求されることもあり、金銭的にも大きなリスクがあります。 それ以外にも、同じ職場で働く他の社員のモチベーションの低下や精神的な安定の阻害、退職等による人材の流出(本人及び他者も)、事後処理(解決、サポート、職場復帰など)に多くの労力や時間が割かれるなど、膨大なリスクをはらんでいます。

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一方、パワー・ハラスメント行為を行った社員は、民事、刑事両面で責任や罪を問われることになります。民事では不法行為(民法709条)により、名誉・自由権・人格権等の侵害、退職強要、いじめ、裁量権乱用などを理由に、損害賠償(慰謝料、遺失質利益)を請求されるなど金銭的なリスクを負います。また、刑法ではその行為等に応じ、傷害、暴行、脅迫、名誉毀損、侮辱、強要などの罪を問われることになります。さらに、社内の就業規則や懲罰規定により懲戒解雇、出勤停止、減給、けん責など懲戒処分を受けるリスクもあり、自分の人生を取り返しのつかないものにしてしまいます。その他にも被害者や遺族などから恨まれたり、社会的な批判も受けることになります。

被害者は、個人の名誉・人格や尊厳が傷つけられる、働く意欲が減退する、精神的な苦痛を受ける、うつ病・パニック障害・PTSD(Post-traumatic Stress Disorder)などの精神疾患に罹患する(最悪自殺も)、退職せざるを得なくなるなど、相当の実害・ダメージを受けることになります。

なぜこのような問題の顕在化が増加しているのか

一つ目は、職場においては様々な世代や性、国籍の人が常に入れ替わり立ち替わり循環していますが、十人十色と言われるように、これらの種々の人々の価値感の違い(ギャップ)がより大きくなってきたことが大きな理由として挙げられます。この価値観は、これまで受けてきた教育環境や、仕事を通して経験してきたこと、家庭環境など様々な要因によって形作られます。
例えば、以下は上司と部下の価値観の違いが良く出ているケースです。
上司Aは自分が育ってきた環境や経験をもとにマネジメント(指導・教育など)を行います。部下Bに対して、厳しく強い口調で指導します。Aは、自分の若い頃の経験をもとに、同じように指導をしていますので、全く悪気はなくごく普通の指導を行ったつもりです。一方、部下Bは強い口調で言われたため自分が“叱られた”と感じ強く傷つきました。勿論指導もあったのですが、そちらの印象よりも叱られた印象が強く残りました。実は部下Bは、学校でも、家庭でもあまり叱られた経験が無かったのです。・・・この様なケースが繰り返されることで部下Bは次第に追い詰められていきます。一方、上司Aは、部下Bを、素直じゃない、おとなしい、使えないヤツ・・・と益々口調も強くなっていったり、諦めて無視したりするようになります。

二つ目は、インターネット等の発達により情報が検索という手法で比較的容易に入手可能なことです。
例えば、“いじめ 上司”や、“暴力 上司”などのキーワードを入力しインターネットで検索すると、すぐに、パワハラ(パワー・ハラスメント)とは何か、対処方法はなど、労働者等が簡単に情報を手にすることができる環境に今はあります。

企業・組織の取り組みは

企業・組織がまず行うことは、自組織にも必ず、パワハラは存在していることを認識することです。「そんなのは新聞やテレビの話しだ。内には関係ない」と思った経営者や管理職の方は、自分自身のパワー・ハラスメントを疑ってみてください。そのくらい身近なところにパワー・ハラスメントは存在します。何故なら、貴方と部下の価値観は違うからです。
パワハラの存在を前提に、組織としてパワー・ハラスメントの防止の基本方針を明確にします。当然、万が一発生した場合の相談体制や、日頃からの監視体制の充実も図るべきです。さらに社員特に管理職に対する啓蒙や具体的な教育(研修等)も必要になります。
また、大切なことは、早期にその兆候を見つけ出しクローズ(情報を隠す)しないことです。裁判例でも、通常の注意義務があれば容易に認識していたはず、問題が発生した後にすぐに手を打っておけば防止できたはず、と事後の処理を判断材料にされ、企業等の責任を問われることが多いです。これらは経営者や管理職の方の日頃の意識や、組織としての仕組みにかかっています。

また、よく質問を受けるのが、「どこまでは指導で、どこからがパワー・ハラスメントか」ということです。
非常に難しい質問です。というのは同じ言葉を発したとしても、Cさんが言った場合と、Dさんが言った場合では、相手の受け取る印象や意味は違ったものになるからです。それ以前の人間関係や、立場、表情、ジェスチャー、周りに他人がいるかいないかによっても変わってきます。
しかし、パワー・ハラスメントの態様など基本的な事項はあります。まずは、これらをある程度正しく認識したうえで、いくつかの具体的な事例を通して学ぶことで、ある程度の線引きは可能になります。さらには管理職同士のディスカッション等を通じて、考え方や見方の違いなどを学ぶことができれば、自分自身のより明確なモノサシができます。
一言で言ってしまえば、“良識”の範囲内を守っていれば問題はありません。

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最後に、ご参考までに精神障害に関する厚生労働省の労災認定の際の指針を紹介させていただきます。
「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針について」
(平成11年9月14日付け基発第544号 都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通知)
1.基本的考え方について
心理的負荷による精神障害の業務上外の判断に当たっては、精神障害の発病の有無、発病の時期及び疾患名を明らかにすることはもとより、当該精神障害の発病に関与したと認められる業務による心理的負荷の強度の評価が重要である。その際、労働者災害補償保険制度の性格上、本人がその心理的負荷の原因となった出来事をどのように受け止めたかではなく、多くの人々が一般的にはどう受け止めるかという客観的な基準によって評価する必要がある。

これはあくまで労災を認定する際の判断基準ですが、本人(被害者等)の受け止め方ではなく、下線部分の「多くの人々が一般的にはどう受け止めるかという客観的な基準によって評価する」がポイントになります。

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